ベンジャミン・バトラー
Benjamin Butler

  • Installation view from "Trees Alone" at Tomio Koyama Gallery, 2016 © Benjamin Butler photo by Kenji Takahashi
  • Installation view from "Trees Alone" at Tomio Koyama Gallery, 2016 © Benjamin Butler photo by Kenji Takahashi
  • Installation view from "Trees Alone" at Tomio Koyama Gallery, 2016 © Benjamin Butler photo by Kenji Takahashi
  • Benjamin Butler ベンジャミン・バトラー Untitled Tree 2016 oil on linen 50.0 x 60.0 cm ©Benjamin Butler
  • Benjamin Butler ベンジャミン・バトラー Untitled Tree 2016 oil on linen 50.0 x 60.0 cm ©Benjamin Butler
  • Benjamin Butler ベンジャミン・バトラー Untitled Tree 2016 oil on linen 50.0 x 60.0 cm ©Benjamin Butler
  • Benjamin Butler ベンジャミン・バトラー Untitled Tree 2016 oil on linen 50.0 x 60.0 cm ©Benjamin Butler
  • Benjamin Butler ベンジャミン・バトラー Untitled Tree 2015 oil on linen 50.0 x 60.0 cm ©Benjamin Butler
  • Benjamin Butler ベンジャミン・バトラー Untitled Tree 2015 oil on linen 50.0 x 60.0 cm ©Benjamin Butler
  • Benjamin Butler ベンジャミン・バトラー GreyTree 2012 oil on linen h.60.0 x w.50.0cm ©Benjamin Butler
  • Benjamin Butler ベンジャミン・バトラー PastelForest 2012 oil on canvas 35.6 x 27.9cm ©Benjamin Butler
  • Installation view from “Selected Trees” at 8/ ART GALLERY/ Tomio Koyama Gallery, Tokyo, 2014 ©Benjamin Butler photo by Kenji Takahashi
  • Benjamin Butler ベンジャミン・バトラー DarkTree(Blue,Green,Brown) 2010 oil on linen 193.5 x 130cm ©Benjamin Butler
  • Benjamin Butler ベンジャミン・バトラー Untitled (Blue,Green,Brown) 2010 oil on linen 182 x 259cm ©Benjamin Butler
  • Benjamin Butler ベンジャミン・バトラー Untitled 2010 oil on linen 33x24cm ©Benjamin Butler
  • Benjamin Butler ベンジャミン・バトラー Untitled 2010 oil on linen 33 x 24cm ©Benjamin Butler
  • Benjamin Butler ベンジャミン・バトラー DarkTree(Blue) 2008 oil on canvas 41 x 50.5cm ©Benjamin Butler
  • Benjamin Butler ベンジャミン・バトラー Leafless Trees 2008 oil on canvas 41x50.5cm ©Benjamin Butler
  • Benjamin Butler ベンジャミン・バトラー Untitled (LeaflessTrees) 2006 oil on canvas 152.4 x 243.8cm ©Benjamin Butler
  • Benjamin Butler ベンジャミン・バトラー TwoTrees,Blue-Green 2006 oil on canvas 40.5 x 50.5cm ©Benjamin Butler
  • Benjamin Butler ベンジャミン・バトラー Mountain TreeGreen 2003 oil on canvas 40.5 x 50.5cm ©Benjamin Butler
  • Benjamin Butler ベンジャミン・バトラー OceanTree 2003 oil on canvas 50.5 x 40.5cm ©Benjamin Butler
  • Benjamin Butler ベンジャミン・バトラー P.M.ThroughtheTrees 2003 oil on canvas 60.5x76.0cm ©Benjamin Butler
  • Benjamin Butler ベンジャミン・バトラー OceanTree 2001 oil on canvas 51.0 x 41.0cm ©Benjamin Butler
  • Benjamin Butler ベンジャミン・バトラー Sway 2001 oil on canvas 41.0 x 51.0cm ©Benjamin Butler
  • Benjamin Butler ベンジャミン・バトラー Untitled 2010 water color, color pencil on paper 25.5 x 19cm © Benjamin Butler
  • Benjamin Butler ベンジャミン・バトラー Untitled 2010 color pencil on paper 25.5 x 19cm © Benjamin Butler
  • Benjamin Butler ベンジャミン・バトラー Untitled 2010 color pencil on paper 25.5 x 19cm © Benjamin Butler
  • Benjamin Butler ベンジャミン・バトラー Untitled 2010 color pencil on paper 25.5 x 19cm © Benjamin Butler
  • Benjamin Butler ベンジャミン・バトラー Untitled 2010 color pencil on paper 25.5 x 19cm © Benjamin Butler
  • Benjamin Butler ベンジャミン・バトラー Untitled 2010 color pencil on paper 25.5 x 19cm © Benjamin Butler

ベンジャミン・バトラーは 1975 年アメリカカンザス州、ウエストモーランド生まれ。現在オーストリアのウィーンを拠点に活動を行っています。
バトラーは山や木々、自然をモチーフとした風景画を描きます。その方法は、抽象画を描く事にも通じており、近年特に頻繁に描かれている木々の絵画は、より抽象的な要素が多く見られます。バトラーが描く単純化された木々の枝や幹のフォルムは、コントラストの明瞭な色彩によって引き立たされています。さまざまな色彩を操り、縦や斜線、三角、曲線などによる幾何学模様を描いて、具象と抽 象の境界を模索するような彼独得の絵画表現を作り出しているのです。
以前彼は、美術史の異なる論点をむすびつけることに興味を持っており、ポストモダンにおいての本質はなにかという文脈において、風景画というシンプルで近代的な主題はとても重要なものと考えていました。事実、画面全体に余白を作ることなく反復されるリズミカルな線には、そのまま抽象表現主義の歴史が詰まっているかのようであり、水平垂直のリズムはモンドリアンを、単純化された色面と線との関係はフランク・ステラを彷彿とさせます。
抽象と具象の境界線をなぞるような彼の絵画は、こうしたコンポジションにおける様々な要素がありながらも、詩的で優しさがありつつ、同時に現代的なクールさも漂わせ、個人の記憶に働きかけるように鑑賞者に物静かな瞑想的時間を与えます。

バトラーは、ニューヨーク、ロサンゼルス、ロンドン、ウィーン、バーゼル、ベルリンなど、世界各国の都市で個展を開催しつづけており、近年の代表的な個展に、2014 年ニューヨーク、Klaus von Nichtssagend Galleryでの「Green Forest」や、2015年ウィーン、 Galerie Martin Janda での「Another Tree, Another Forest」、2016年3月〜4月には小山登美夫ギャラリーにて「Trees Alone」を開催致しました。また、彼は2005年ニューヨーク、PS1/MOMAでの「Greater New York」を含め、国際的にも数多くのグループ展に参加しています。

個展

2016 「Trees Alone」小山登美夫ギャラリー、東京

2015 「Another Tree, Another Forest」Galerie Martin Janda、ウィーン
2014 「Selected Trees」8/ ART GALLERY/ Tomio Koyama Gallery、東京

「Green Forest」Klaus von Nichtssagend Gallery、ニューヨーク
2013 「In the Midst, Between, Betwixt」Pippy Houldsworth Gallery、ロンドン
2012 「Some Trees」Klaus von Nichtssagend Gallery、ニューヨーク

「PASTELS」Galerie Martin Janda、ウィーン
2010 「Paintings and Drawings 2010 」小山登美夫ギャラリー、東京
2009
 「These Trees」Galerie Martin Janda, ウィーン
2008 「Dark and Leafless」Lora Reynolds Gallery、オースティン、アメリカ

2007 「Leafless Trees and Sakura」小山登美夫ギャラリー
、東京
「New Trees」Karyn Lovegrove Gallery、ロサンゼルス
「New Trees」Galerie Michael Zink、ベルリン
2006 「New Trees and Forests」Lora Reynolds Gallery、オースティン、アメリカ
2005 「New Paintings」Karyn Lovegrove Gallery、ロサンゼルス
「Forest's Edge」Team Gallery、ニューヨーク

「Paintings」Groeflin Maag Galerie、バーゼル
2004 「Trees」Team Gallery、ニューヨーク

「Tree Alone」Galerie Lisa Ruyter、ウィーン
2003 「Early Spring」Greener Pastures Contemporary Art、トロント
「Little Mountain」Project Room/小山登美夫ギャラリー
2002 「Mountain Painting」Team Gallery、ニューヨーク

グループ展

2014 「Short」Galerie Martin Janda、ウィーン
2013 「囚われ、脱獄」XYZ collective、東京

2011 「LEAFLESS」Klaus von Nichtssagend Gallery、ニューヨーク
2009 「DARK SIDE OF THE MOON」Galerie Martin Janda、ウィーン

「Mark-Making: Dots, Lines and Curves」Lora Reynolds Gallery、テキサス、アメリカ
2007 「Inside the Pale (curated by Frank Schroder)」Thrust Projects、ニューヨーク
2006 「Benjamin Butler, Holly Coulis, Ridley Howard」Galleria Glance、トリノ
「Home coming」Nerman Museum/Epsten Gallery、オーバーランドパーク、アメリカ

「Strange Weather (curated by Amy Sillman)」Monya Rowe Gallery、ニューヨーク

「Summer Group Show」Lora Reynolds Gallery、オースティン/Shane Campbell Gallery、オークパーク/Karyn Lovegrove Gallery、ロサンゼルス

「Approaching Landscape」Galerie Michael Zink、ミュンヘン

「Palette」Greenberg van Doren、ニューヨーク
2005 「Sad Songs」イリノイ州立大学、アメリカ

「PULP」Karyn Lovegrove Gallery、ロサンゼルス

「Greater New York」P.S.1、ニューヨーク

「Honeymoon with Romeo」Groeflin Maag Galerie、バーゼル

「Devil's Punchbow」Christopher Grimes Gallery、サンタモニカ、アメリカ

「Hello Sunday」Sixtyseven、ニューヨーク
2004 「Beat the Reaper」Allston Skirt Gallery、ボストン

「Full Disclosure」Geoffrey Young Gallery グレートバーリントン、アメリカ

「Five Artists Show」Rove/Kenny Schachter ロンドン
「A.C」Elizabeth Dee Gallery、ニューヨーク

「Where do we come from, what are we? where are we going?」Champion Fine Art、ロサンゼルス
2003 「The Larger Room」678 Echo Park Avenue、ロサンゼルス

「Game Over」Grimm/Rosenfeld、ミュンヘン

「Greetings from New York: New Abstraction」Galerie Thaddaeus Ropac、ザルツブルグ
2002 「Inaugural Exhibition」Greener Pastures Contemporary Art、トロント
2000 「Electraslip Knife」Alternative Space、シカゴ
1999 「long cold winter in an endlessnameless (curated by Slater Bradley, Jay Batlle and Amy Sarkisian)」Studio 870、ロサンゼルス

installation view from [ Paintings and Drawings 2010 ] at Tomio Koyama Gallery, 2010

このインタビューは、オープニング(4月3日)当日、ギャラリーで行われたアーティスト・トークの模様を編集したものです。

——— なぜ、木々や風景を描くのでしょうか?

バトラー 2001年、抽象画を描こうとしたときに、そのきっかけとして風景画のイメージを使い始めました。この年は私が最初に日本に旅行した年でもあります。日光の森や山、鎌倉の海と海岸など、自分の生活の中で様々な絵画的な風景に出会い、それらが描くモチーフと響き合って、私の関心をより強くしてくれました。またその年、私は祖母から特別なリクエストをもらっていて、それは彼女のために風景画を描いてほしい、ということでした。この誠実なお願いはいい気分転換になるし、答えたいという気持ちがありましたがそれ以上に、このアイデアによって私はある種のフォーク・アートに興味を持つようになりました。祖母は、例えばアメリカのテレビ番組で絵画教室をしているボブ・ロスのような —彼はそのメローな声や大きなヘアスタイル、そして彼の「happy trees」というシリーズの絵でよく知られていました— 作品を思い描いているのだなということはわかっていました。上品でわかりやすく、抽象的で、潜在的にはちょっと卑しい感じのするペインティングというのが、正しい行いに思えたのです。カンザスという中西部で育ったことも、この発想に関連していると思います。アメリカの中西部に住む人々の多くには、もったいぶったものに対するアレルギーがあるようです。
もちろん、すべての画家はあるポイントで、或いは何度も、「何を描くか」の選択を迫られます。たくさんの選択肢があり、にもかかわらずすべてがやり尽くされてしまっています。私が風景と木々に心惹かれたのは、具体的には次のような理由が考えられます。まず、それらはロマン派の絵画の歴史と強くつながっています(私が、絵画の中に描かれる木として好んで参照するのは、カスパー・ダーヴィッド・フリードリヒ、ハドソンリバー派の画家たち、モンドリアン、チャールズ・バーチフィールドなどです)。次に、木というモチーフはすべての人々にとって身近で、もはやクリシェ(使い古された表現)と言ってもいいくらいです。2010年を生きる現代画家として、私は常にこの対極性に苦しみ続けています。一体、本質的なロマン派的絵画とは、このすべてがやりつくされ、すべてがクリシェのように感じられる時代に成立するだろうか? 最後に、風景画への言及というのは、キッチュなものとの密接なつながりもあります —私は、その多くが格安で売られているようなキッチュな絵画を集めていて、それらを尊敬しているのは多分、それらがあまりに不器用で直接的すぎ、だからこそ誠実であるからだと思います。

bb-insta-10-18-500x333
installation view from [ Paintings and Drawings 2010 ] at Tomio Koyama Gallery, 2010
©Benjamin Butler
——— 近年の作品はより抽象的になってきているようです。どのように興味が変わったのでしょう?

バトラー これらの新作では、私は作品をより抽象的な方向に導くために、木の形を筆でペイントするよりも、色鉛筆で線を描くようにして表すことを始めました。木のようなフォルムがあるものの、そこには現実的な木の存在が希薄になって来ています。それでもこの質問に答えるとするならば、私の興味と描く方法は、全く変わっていない、と言えます。私にとって、作品は常に抽象についてや、主題という問題としてのペインティングについてでした。風景画や木々は、いつも既成の構図や、抽象が生まれる場所として機能します。ですが私は、人々が自然に接したときに感じるセンチメンタルな反応の仕方と、アーティストが自然に付与している「ペインティング」、「モダニズム」、「抽象」といったものとの狭間にある、平行線の状態を描けるのではと思っています。誰でも、今や自然が未だかつてない速度で消えて行ってしまっていることを知っています。自然には、かつてものごとがいかに存在していたか、どのように見えていたか、ということへのノスタルジーがあります。これは、過去の芸術制作のやり方にとてもよく似ています。抽象表現主義は山々なのかもしれないし、カラーフィールドペインティング(もっと言えばストライプ・ペインティング)は木々、ミニマリズムは北極の氷の頂上かもしれないのです。

———あなたはなぜ、木々をこのような幾何学的なパーツに分解するのでしょう。あるいは、これらはもはや木ではなく、パターンなのでしょうか?

バトラー 確かに、木々とパターンとの区別、というのは重要なことです。多分、これは私がまず第一にペインターであって、木の専門家とか木のお医者さんではない、ということを皆さんに思い出してもらう、いい機会だと思います……。時々、私のペインティングは現実の木々についてのものでは全くないのだ、ということをわかってもらうために、一体あと何本の木を描けばいいいのだろう、と思うことがあります。多くを望み過ぎなのかもしれないけど、ペインティングに描かれる木というものは、過去の遺物として見つめられ、敬われ、やがて無視されていく、そういうものです。木々とその周囲を描くパターンとを見た目上で区別することによって、このような思考につながる試みをしています。

——— ブラッシュストロークの違いについて教えて頂けますか? 薄く塗られただけの部分もあれば、マットに塗りつぶされた箇所もあります。

バトラー ペインティングのテクニックの多様さを用いています。例として、一番大きいペインティング”Untitled (Blue, Green, Brown)” *1 では、絵の中のそれぞれのエリアが、個々にひとつのペインティングとして機能する、ということを基本的に考え続けていました。ドライブラシのかけ方によって、ある部分はたくさん塗る過程の中でより表情豊かになり、ある部分はその逆になります。マットな部分はまた、とても形式的な部分であるとも言えます —ある時は鑑賞者を絵の中に招き入れ、またある時は画面からはじき返すのです。

bb-pa-10-09-500x350
*1 Untitled (Blue, Green, Brown), 2010
oil on linen 182.0 x 259.0 cm ©Benjamin Butler

———作品の多くには、地平線のようにひかれた線や、白い余白のラインが見えますが、これらは地平を表していますか?

バトラー 白いキャンヴァスの、地が出ている部分ですよね? 小さいペインティングと、大きいものでも”Dark Tree (Blue, Green, Brown)” *2 においては、この白い線はまさに、木が育った土台としての地面、地平線を表しています。けれど、そこには2重の意味があります。この部分はまたペインターにとっての土台でもあって、キャンヴァスにジェッソが塗られて、今まさにその上から絵の具を置いていく、準備ができあがった状態の下地でもあるわけです。
その他のペインティングでは、余白部分は似たような機能を持ってはいるけれど、そこまで比喩的ではありません。

bb-insta-10-04-500x750
*2 Dark Tree (Blue, Green, Brown), 2010
oil on linen 193.5 x 130.0 cm installation view from [ Paintings and Drawings 2010 ] at Tomio Koyama Gallery, 2010 ©Benjamin Butler
——— “Autumn 2010” *3 という作品はオレンジ色一色で塗りつぶされていて、他の作品とはかなり違いますね。

バトラー この作品Autumn 2010は、ちょっと不思議な方法でできあがったんです。キャンヴァスをストレッチャーに貼る前に、私はその木枠の部分を眺めていて、ちょうど6年前に制作したペインティングで、とてもラフに木立を描いたようなストライプのシリーズを思い出したんです。水平の面の上に垂直の木枠があって、それがまるでそのストライプのシリーズが必要最低限の要素でよみがえったように思えました。季節というのも繰り返し描くテーマのひとつですが、それはあるときには画家自身の制作の循環を表すメタファーであり、あるいはよりシンプルに、風景画というジャンルへのつながりを得る方法でもあります。そのストレッチャーの構図がどのような結果になったかというと、とても人工的な色をした、ミニマルで、なおかつペインタリーでもある、このオレンジの絵になりました(バーネット・ニューマンのzip painting[ビュッという勢いのある絵画、ニューマンの手法] を思い起こさせもしますね)。激しく、人工的な色のせいで、この絵が秋の色には到底見えないという人もいることも知りました。そのことを頭において、この絵がこれからやって来る今年、2010年の秋を表す予兆かもしれない、という設定にするのも面白いのではと思いました。

bb-pa-10-11-500x336
*3 Autumn 2010
oil on linen 130.0 x 193.5 cm ©Benjamin Butler

———タイトルがついている作品もあれば無題のものもありますが、どのように区別していますか?

バトラー タイトルは、展示全体のトーンを設定することができます。”Paintings and Drawings 2010″という展覧会タイトルには、伝統的な抽象絵画の展覧会、といったイメージを感じてほしかったので、作品ではまずドローイングや小さいペインティングを「無題」と決めて行きました —「無題」と題するのは、20世紀半ばまでの抽象画家たちがよく使っていた方法なんです。けれども4つの大きなペインティングについては、私の過去の作品と連なるように、タイトルをつけました。私の昔の作品は”Sway”(動揺)とか”Orange Stripes, Morning Light”とか、詩的なものが多く、それらはやがて風景や季節の形容詞のせいで詩的に聞こえるだけの、ありふれたタイトルに変化していきました。今は大体、作品を名付ける時は直球で、使っている色や描いた自然のモチーフの名前を、ガイダンスとして直接的に記すだけのことが多いです。こういった方法での1番エクストリームな例は、2006年に描いた”Fifty-Five Trees at Sunset”という絵で、この絵には実際、55本の木が描かれていたんですよ。

———今回、ドローイングをギャラリーで発表するのは初めてですが、これらはペインティングの習作ですか?あるいは、独自の意味合いがあるのでしょうか?

バトラー ドローイングとペインティングはこの展示の中でお互いに会話し合い、影響し合っていて、決して習作というわけではありません。それぞれが個々に独立した作品です。今回の展示は、もともとドローイングのショーとして考えていました。これは私にとって、とても内省的な局面に来ているということです。私はニューヨークのスタジオから離れて、非日常的なセッティングで制作を続けました。このことでいくつかの、試さずにはいられないような新しいペインティングのアイデアが生まれました。色鉛筆のドローイングと水彩を鎌倉で描き終わった後、私はそこで小さなサイズの油絵を描き始めました。ドローイングは文字通り、ペインティングへの道筋をつけてくれたのです。ドローイングはそのあと日光でも描き続けて、東京のスタジオスペースに移り、それから大きな絵を描き始めました。

———この展覧会を終えて、やってみたい新たな試みが生まれましたか?

バトラー 展覧会の間と終わった後には、いつもものごとをじっくり考え、再評価する時間が必要です。作品へと戻って行くためには、新しい方法を見つけなくてはなりません。日本で過ごした今回の時間は、とても特別なものでした。これから何が私の視点を変えて行くことになるのか、今の時点で言葉にすることは難しいです。今度私がニューヨーク・ブルックリンのスタジオに戻って絵を描き始めるまで、それはわからないでしょう。にも関わらず、次のコーナーでは一体何が待ち受けているのか、私はとても興奮していますし、改めてエネルギーチャージされた気持ちでいます。

bb-insta-10-03-500x333
installation view from [ Paintings and Drawings 2010 ] at Tomio Koyama Gallery, 2010
©Benjamin Butler
ベンジャミン・バトラー interview April, 2010
Interview by Tomio Koyama Gallery
Photo / Kei Okano:installation view
Ikuhiro Watanabe :works