ベンジャミン・バトラー

ベンジャミン・バトラー展 「Trees Alone」

 〈作品紹介〉

バトラーは山や木々、自然をモチーフとした風景画を描きます。その方法は、抽象画を描く事にも通じており、近年特に頻繁に描かれている木々の絵画は、より抽象的な要素が多く見られます。バトラーが描く単純化された木々の枝や幹のフォルムは、コントラストの明瞭な色彩によって引き立たされています。さまざまな色彩を操り、縦や斜線、三角、曲線などによる幾何学模様を描いて、具象と抽象の境界を模索するような彼独得の絵画表現を作り出しているのです。

当初風景画のモチーフは、観る人に広く受け入れられる抽象画を描くための、一つの手段であったとバトラーは言います。また、祖母から風景画を制作してほしいという願いを引き受けたのをきっかけに、実際のスタジオでの絵画制作へと発展していきました。そしてそこから生み出されたこの主題が、作家が評価され始めるきっかけとなったのです。

2015年ハフィントンポストに掲載されたインタビューの中で、バトラーは描く事は記録をし、言語や歴史と議論する事であると言います。また作品の中で過去の抽象画家、特にモンドリアンとの「対話」を試みそれを作品に反映していくため、「木」の構成やモチーフは自分にとってまるで「タイムマシーン」のようだったと語っています。

以前彼は、美術史の異なる論点をむすびつけることに興味を持っており、ポストモダンにおいての本質はなにかという文脈において、風景画というシンプルで近代的な主題はとても重要なものと考えていたのです。事実、画面全体に余白を作ることなく反復されるリズミカルな線には、そのまま抽象表現主義の歴史が詰まっているかのようであり、水平垂直のリズムはモンドリアンを、単純化された色面と線との関係はフランク・ステラを彷彿とさせます。

抽象と具象という相反する二つの事柄に関しては、常にバトラーが考え、キャンバスに筆を走らせる行為に欠かせない効果があるものであり、「ロマンチック」と「キッチュ」、「ハイアート」と「ローアート」といった相反するものの考え方も、バトラーの作品制作に対してとても重要な意味を持つものです。

美術批評家ロベルタ・スミスは、2014年ニューヨークタイムズのアートレビューの中で

「(彼の作品は結果として)ミルトン・エイヴリーやアレックス・カッツと同じように、自然に対する敬意を表現し、初期抽象表現を追求した風景画の重要な役割に立ち戻るのみでなく、清々しい程の現代性を感じさせる」と評しました。

抽象と具象の境界線をなぞるような彼の絵画は、こうしたコンポジションにおける様々な要素がありながらも、詩的で優しさがありつつ、同時に現代的なクールさも漂わせ、個人の記憶に働きかけるように鑑賞者に物静かな瞑想的時間を与えます。

 〈展覧会について〉

本展は、小山登美夫ギャラリーでは2年ぶり、5度目の個展となり、2015年〜2016年制作の新作ペインティングを展示致します。

本展に際して、バトラーは次のように語っています。

「私の作品の中に繰り返しの感覚があれば、それは文字通りのものではありません。私は考えを何度も巡らせるのが好きで、時には過去の面影を拾い上げ、再び前面に出します。タイトルの「Trees Alone」は、一本の樹のイメージ(もしくは一つの作品)が、この展覧会の一部となっていくことを意味します。作品は、絵画作品としても、イメージとしても、キャンバスの中の要素としても単体として存在し、そしてそれぞれの絵画は一旦この展覧会から離れると、また単体として存在するのです。複数が単数になり、単数が複数になるのです。
画家として、私はスタジオで一人の時間を多く費やします。今回の展覧会は、いままでの他の展覧会よりも、より自伝的になると感じています。そして、本展は今回の新作を制作するにあたっての考え方やプロセスとより綿密に反響しあっています。2004年、ウィーンでの私の最初の個展のタイトルは「Tree Alone」でした。東京での「Trees Alone」は、ウィーンでの展覧会からの12年の歳月や、16の個展や、ウィーンと東京の9000キロの距離を超えた続きや結果として意味しています。」

13年間生活したニューヨークからウィーンに移り住み4年。息子が生まれ、父となったバトラーは新しい環境の中でより自分自身の作品に向き合い、私生活とのバランスの良い制作時間から意欲的に作品を作り出しています。今回の待望の新作をぜひご高覧下さい。

作家プロフィール

ベンジャミン・バトラー

ベンジャミン・バトラーは 1975 年アメリカカンザス州、ウエストモーランド生まれ。現在オーストリアのウィーンを拠点に活動を行っています。
バトラーは山や木々、自然をモチーフとした風景画を描きます。その方法は、抽象画を描く事にも通じており、近年特に頻繁に描かれている木々の絵画は、より抽象的な要素が多く見られます。バトラーが描く単純化された木々の枝や幹のフォルムは、コントラストの明瞭な色彩によって引き立たされています。さまざまな色彩を操り、縦や斜線、三角、曲線などによる幾何学模様を描いて、具象と抽 象の境界を模索するような彼独得の絵画表現を作り出しているのです。
以前彼は、美術史の異なる論点をむすびつけることに興味を持っており、ポストモダンにおいての本質はなにかという文脈において、風景画というシンプルで近代的な主題はとても重要なものと考えていました。事実、画面全体に余白を作ることなく反復されるリズミカルな線には、そのまま抽象表現主義の歴史が詰まっているかのようであり、水平垂直のリズムはモンドリアンを、単純化された色面と線との関係はフランク・ステラを彷彿とさせます。
抽象と具象の境界線をなぞるような彼の絵画は、こうしたコンポジションにおける様々な要素がありながらも、詩的で優しさがありつつ、同時に現代的なクールさも漂わせ、個人の記憶に働きかけるように鑑賞者に物静かな瞑想的時間を与えます。

バトラーは、ニューヨーク、ロサンゼルス、ロンドン、ウィーン、バーゼル、ベルリンなど、世界各国の都市で個展を開催しつづけており、近年の代表的な個展に、2014 年ニューヨーク、Klaus von Nichtssagend Galleryでの「Green Forest」や、2015年ウィーン、 Galerie Martin Janda での「Another Tree, Another Forest」、2016年3月〜4月には小山登美夫ギャラリーにて「Trees Alone」を開催致しました。また、彼は2005年ニューヨーク、PS1/MOMAでの「Greater New York」を含め、国際的にも数多くのグループ展に参加しています。

  • Installation view from "Trees Alone" at Tomio Koyama Gallery, 2016 © Benjamin Butler photo by Kenji Takahashi
  • Installation view from "Trees Alone" at Tomio Koyama Gallery, 2016 © Benjamin Butler photo by Kenji Takahashi
  • Installation view from "Trees Alone" at Tomio Koyama Gallery, 2016 © Benjamin Butler photo by Kenji Takahashi
  • Installation view from "Trees Alone" at Tomio Koyama Gallery, 2016 © Benjamin Butler photo by Kenji Takahashi
  • Installation view from "Trees Alone" at Tomio Koyama Gallery, 2016 © Benjamin Butler photo by Kenji Takahashi
  • Installation view from "Trees Alone" at Tomio Koyama Gallery, 2016 © Benjamin Butler photo by Kenji Takahashi
  • Installation view from "Trees Alone" at Tomio Koyama Gallery, 2016 © Benjamin Butler photo by Kenji Takahashi
  • Installation view from "Trees Alone" at Tomio Koyama Gallery, 2016 © Benjamin Butler photo by Kenji Takahashi
  • Installation view from "Trees Alone" at Tomio Koyama Gallery, 2016 © Benjamin Butler photo by Kenji Takahashi