上田義彦

「Māter」

©︎Yoshihiko Ueda

この度小山登美夫ギャラリーでは、上田義彦展「Māter」を開催いたします。
本展は、2017-2018年の「林檎の木」以来、上田義彦の当ギャラリーにおける2度目の個展となり、最新作を発表します。

【上田義彦とその作品
ーイメージや既成概念にとらわれない、「生」を敬う優しく、鋭く力強い眼差し】

国内外で高い評価を受け、40年もの間写真家として第一線で活躍をし続けている上田義彦。その作品からは、一人の写真家としての、一貫した視点、思想、人柄が色濃く伝わってきます。

ポートレート、森、家族、河、建物、縄文時代の人骨、「紙」の肖像、林檎の木、、、

「この世の成り立ちを見つけたい」「私たちは無常を生きている。そのうつろいを肯定したい」と語る上田は、長い年月丁寧に構想を紡ぎ、様々なモチーフを見出し、撮影に臨みます。

そしてそのイメージや既成概念を越えた、本質的な「生」としての存在性を写し出し、そのものたちが纏う生々しい気配や重ねられた時間は、作品の絵画のマチエールのような多層感として表れます。

その表現は「生」を敬う、上田の優しく鋭く力強い眼差しがあるからこそ可能にしていると言えるでしょう。

2021年には初めて脚本、監督、撮影を手がけた映画作品「椿の庭」も公開し、現在多摩美術大学グラフィックデザイン科教授として後進の育成にも力を注ぐなど、
上田の様々な活動は、表現の可能性を限りなく広げる挑戦でもあるかのようです。

「Māter」
c-print, wood frame
image: 11.0 x 16.5 cm / frame: 45.0 x 55.0 cm
©︎Yoshihiko Ueda

【本展および新作に関してー
Māter 「母、源」
自然、人、すべてを対等に捉え、根源的な生命としての存在を作品に表す】

今回の展覧会、作品名となる「Māter」(マーター)はラテン語で「母・源」という意味。出展作は、夜の月の光で滝、渓谷と、女性の身体を撮影し、それを1 対の作品としています。

水、人体、母、地球、月の力、太古から連綿と続く命を生む力として、自然や女性の体は対等な、密接に繋がるものであり、朧げに写し出された水流と女性の体の肌のなめらかさからは、艶かしさや、気配、自然の呼吸まで感じるような不思議な共通するものがあります。

それは、通常私たちが「水とは」、「滝とは」、「人の体とは」こういうものだと、それぞれ記号的に別のものとして理解しているのであって、実はこれらは地球において、生命として全て繋がっており、一つの大きな織り物のように編み込まれた存在である。自然と人をすべてを対等に捉え、根源的な生命としての存在を作品に表す、上田独自の深い眼差しがその真実を教えてくれます。

今回の作品は、1990年に撮影したアメリカインディアンの聖なる森「Quinault」に始まり、2011年屋久島の森を撮った「Materia」、そして2017年の「林檎の木」に続く、命の大元を探る一連のシリーズの延長上にあるものです。

地球という、命を生む力を奇跡的に持つ惑星を一つの大きな生命体とし、その断片としての「水・岩」と、やはり命を産む力を持った女性を、地球の断片として捉える。夜の闇の中で命の蠢き(うごめき)だけを浮かび上がらせ、それ以外のものは深い闇の中に沈み込ませる「月の光」で撮影し続けた、まるで謎に包まれた命の大元を推察するひとつの旅でした。

「宇宙の暗闇に浮かぶ、青く美しい地球の姿は、奇跡の生命体そのものだ。」中学1年のときにアポロ宇宙船から撮られた写真を見た際、そう感じたのが今思えばこのシリーズの始まりだったのかもしれない。と上田自身語っています。

「Māter」
c-print, wood frame
image: 11.0 x 16.5 cm / frame: 45.0 x 55.0 cm
©︎Yoshihiko Ueda


【上田作品における「言葉」
ー言葉の語源から物事に潜む真実を捉える】

上田にとって言葉や、その語源によるインスピレーションは、表現において大事な要素となってきました。

「大型カメラを担いで森を彷徨い、徐々に見え始めた写真の姿を見失わないよう「Materia」と名付けた。木の幹、そして命を生む力という意味を持つこのラテン語に出会い、それまで霧に包まれていたように、ぼんやりとしていた写真の輪郭が、鮮明に姿を現した瞬間だった。」
(上田義彦『Materia』求龍堂、2012年)

「Materia」(木の幹)、「Water」(水)という言葉自体もまた「Māter」(母・源)から派生したものであり、古代の人々は、すでにこの連綿と繋がる世界の原理を見つけ、後世に伝える言葉で残していた。そこに託された背景が忘れさられた現代に、上田作品は改めてその遥かな世界の成り立ちを私たちに表しています。

「そもそも、日常という言葉がわかりにくくさせているなといつも感じていて。日常でも非日常でもない、『無常』の中に私たちは生きていると思うんです。
『常』であることがない、変化やうつろっていく瞬間の中を生きている。、、、
生きるということはその連続なんですが、そこにだけ真実がある。、、、僕はそれを見つめていたいと思っています。」
(「写真家・映画監督 上田義彦 インタビュー私たちは無常を生きている。そのうつろいを肯定したい」PINTSCOPE、2021年4月)

静謐で、淡く優しいけれど、鋭くエネルギー溢れる上田作品。私たちは日々気づかない自分たちのすぐ周りにある「生」としての幸せの本質や、世界は変化し、繋がり、果てしない可能性が広がっていることを改めて感じることができるでしょう。その豊潤な世界観を堪能しにぜひお越しください。

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上田義彦写真集『Māter』
ギャラリー店頭にて先行発売中!

¥4,400(税込)
発行:赤々舎

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【上田義彦プロフィール】

1957年兵庫県生まれ。写真家福田匡伸氏、有田泰而氏に師事した後、1982年独立。

東京ADC賞最高賞、ニューヨークADC賞等、国内外の代表的な国際デザイン賞を多数受賞。2014年日本写真協会 作家賞を受賞。同年より多摩美術大学グラフィックデザイン科教授として後進の育成にも力を注いでいる。
2011年~2018年、自身のスペースGallery 916を主宰し、写真展企画、写真集の出版プロデュースを行う。2021年には、初めて脚本、監督、撮影を手がけた映画作品「椿の庭」を公開。

主な個展に「上田義彦『Photographs』」(東京都写真美術館、2003年)、「Chamber of Curiosities」(東京大学総合研究博物館、2006年/国立台湾芸術大学芸術博物館、台北、2011年/リヨン市ガダーニュ美術館、フランス、2011年へ巡回)、「QUINAULT」(G/P Gallery、東京、2009年/Michael Hoppen Gallery、ロンドン、2010年/TAI modern、サンタフェ、2010年へ巡回)、「風景の科学 −芸術と科学の融合−」( 国立科学博物館 、東京、2019年)など。

主な写真集に『QUINAULT』(青幻舎、1993年)、『AMAGATSU』(光琳社出版、1995年)、『at Home』(リトル・モア、2006年)、『Materia』(求龍堂、2012年)、『A Life with Camera』(羽鳥書店、2015年)、『FOREST 印象と記憶 1989-2017』(青幻舎、2018年)、『椿の庭』(赤々舎、2020年)などがあり、本展に際し刊行する『Māter』(赤々舎、2022年)で39冊目の刊行となる。

作品はエルメス・インターナショナル(フランス)、ケンパー現代美術館(アメリカ)、ニューメキシコ美術館(アメリカ)、フランス国立図書館(パリ)、Stichting Art & Theatre(オランダ)に所蔵されている。

https://www.yoshihikoueda.com/

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プレスに関するお問い合わせ先:
Tel: 03-6459-4030 (小山登美夫ギャラリー オフィス)
Email: press@tomiokoyamagallery.com
(プレス担当:岡戸麻希子)
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