菅 木志雄

「有でもなく無でもなく」

間景 Interstitial Scenery 2021 h.180.2 x w.135.0 x d.16.0 cm wood, acrylic, galvanized iron ©︎Kishio Suga

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「菅木志雄 アトリエでの新作制作風景 映像 2021年10月30日」撮影: 髙橋健治

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本展覧会カタログを小山登美夫ギャラリーより刊行(7月9日[土]予定)いたします。
*詳細決まり次第、OIL by 美術手帖にて予約を受付いたします。

【『菅 木志雄 有でもなく無でもなく』展覧会カタログ概要】
A4変形 ドイツ装 / 104頁
日英バイリンガル
予価:4,000円(税込)
刊行:2022年7月9日予定
論考:建畠 晢(多摩美術大学学長、埼玉県立近代美術館館長)
デザイン:加藤賢策、和田真季(LABORATORIES)
発行:小山登美夫ギャラリー

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この度小山登美夫ギャラリーでは、60年代末~70年代にかけて起きた芸術運動「もの派」の主要メンバーであり、戦後日本美術を代表するアーティスト、菅木志雄の個展「有でもなく無でもなく」を開催いたします。

当ギャラリーにおいて、菅は毎年精力的に個展を開いていますが「同じことはやらない」ように毎回異なる関心を持っています。本展では、「有でもなく無でもなく」、「ものは定まった存在でなく(空)、常に変化し続けている」ことに着目し作品を展開。ギャラリースペース奥の部屋全体を使ったインスタレーションと、壁面の立体作品の、全て最新作で発表します。

【菅木志雄と作品制作について –
「あらゆるものは対等の関係にある」
自身の自然観とものの見方で独自のアートを探求しつづける】

60年代の多摩美在学中から、海外に追随するようでは先がないという危機感のもと、日本の、自身独自のアートを模索した菅。

当時イタリアの芸術運動「アルテ・ポーヴェラ」の作家ヤニス・クネリスの生きた馬12頭を展示した作品を見て衝撃を受け、「僕の自然観やものの見方をアートに使ってもいいのだと察知した」と同時に、作庭家 重森三玲や、京都学派、インド哲学の中観論にも共鳴。そこから制作における独自な思考を作り上げてきました。

木や石、金属、ロープなどの「もの」を用い、切り、曲げ、並べ、ずらし、ちょっとした違いで「もの」自体の見えない存在性を引き出す。そして木枠、床置きの板、窓枠、部屋全体、水面、野外空間など、様々な場を作品の「フレーム」として、ものが最大限活きる場所に配置する。
そうしてものの相互関係や見たことのない新しい景色、状況を作品に立ち表してきました。

「人が自然を作り変えていくのと同時に、自然も人間を作り替えていくのであって、両者は同等の力を持っている」*1

いままで作品の素材でしかなかった「もの」自体や「もの」を知覚する人間へ目を向け、あらゆるものと対等な関係を保持する考えは、生きるため、世界とどう向き合っていくかの普遍的なあり方をも表出します。

その広大な世界観は国内外で高い評価を受けており、いままでに約400以上の展覧会に参加。作品は、ニューヨーク近代美術館、ポンピドゥ・センター、テート・モダン、東京国立近代美術館、東京都現代美術館をはじめとした国内外47もの美術館・アートコレクションに収蔵されています。

今年2022年2月まで出身地である盛岡の岩手県立美術館で開催された、大規模な回顧展「開館20周年記念 菅木志雄展 〈もの〉の存在と〈場〉の永遠」において、建畠 晢氏に「もの派のなかでも菅さんはふくよかで、フレキシブル」と評されました。78歳になる現在においても、菅の思考の鋭敏さと制作への情熱はますます高まるばかりです。

【本展および新作に関して –
「あらゆるものは無に向かって変化している」。ものを、世界を認識するためのアート】

最新作の「間景」は、直角に折り曲げられた複数の小さなトタン板が、白いパネル板に様々な方向に配置されているのみ。それなのに規則性がありそうでないそのちょっとしたずれの重なりや、異素材の組み合わせ、それにより生じる影が複雑に絡み合い、周りの空間をも変容させる豊かな情景があらわれていることに驚かされます。

本展に際し、菅は以下のステイトメントを記しました。

<有でもなく無でもなく>
そこにモノがあれば、特に意識しなくても目に入る。目に入ったモノを何かの用途で使用しようとする考えがあれば、よくそれを確認するだろう。その上で使えるものであれば、手にとったり、さまざまな方向や角度から、それを見るなり、ながめたりする。自分が考える用途にあうかどうかである。実体物である以上、<モノ>の存在性や実在感が思考の前面にでてくる。そのような状態で、とりあえず<これは、いけるかもしれない>と感じるまで身近におく。そして自分の意識の中に自然におさまるようになるまで待つ。待っている間にモノの存在など忘れてしまうことだってあるし、自分が必要とするリアリティーが失われてしまうことだってある。モノとはそういうものである。だからいつでも<無の状態>を想定していなければならない。それゆえあらかじめどんな周囲性によって支えられているか見きわめる必要がある。しかしどんな場合でもモノに固執してはならない。モノはいつでも人の知覚とはちがう流れの中にあるからである。モノは人に対応しているのではなく、有の無の領域に対応しているのである。
菅 木志雄

菅作品において、存在に関しての哲学的思考は欠かせないものであり、特にインドの中観哲学における「空の思想」は重要なものとなります。

「空」とは、「すべての存在はその固有の本質を持たない」こと。植物の種がタネとしての姿はなくしつつも生命として継承されるように、あらゆるものは変化しており、それは相互関係によってのみ成り立つと説きます。

菅がいままで見知った「もの」の意味合いを時間をかけて問い直し、既存の状況から解き放つ。そうしてトタン板、木、石は作品の中で支え合い、生き生きと知らない景色や状況を生み出します。人と物、人と人との関わり方、それを認識させてもらえるのが菅作品の魅力です。

「壁や地面からぐっと出てくる、引っ込む。空間にものの一端が出てくるということが作品の重要な要素です。そういった空間のでこぼこのようなものが思考のひっかかりになるのだと思います。」*2

「ものも人も、いまはどんなに大きく立派だとしても、最終的には無に帰するのが定めでしょう。ならばせめて、無に向かっていく過程に意識を傾け存在を認め、リアリティを感じたいじゃないですか。ものを認識するための有効な方策がアートだと僕は信じてきたし、これからもその考えも変わらない。」*3

世界はもっと果てしないが、認識しないと世界は見えない。菅は、私たちが見過ごしがちな側面に根源的な気づきをあたえ、アートという方法を用いて世の中に問いかけ続けています。
「そうやって豊かに世界をとらえることが、人間性の豊かさにまでつながっていくと僕は思ってますよ。」*4
50年以上第一線で活躍し、瑞々しく鋭く現代性あふれる作品制作を続ける、同時代を生きる歴史的アーティスト。菅の最新の作品世界をぜひご覧ください。

*1、3、4 山内宏泰「菅木志雄のアトリエを訪ねて。『日常のなかに、アートへ展開できる動作、行為、状態はいくらでもある」美術手帖ウェブ版、2022年2月
*2 青野尚子「『ものの見方を根本から問い直す。』、カーサブルータス特別編集日本の現代アート名鑑100、2022年5月

【展示風景 オンラインビューイング】

協力:Matterport by wonderstock_photo

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プレスに関するお問い合わせ先:
Tel: 03-6459-4030 (小山登美夫ギャラリー オフィス)
Email: press@tomiokoyamagallery.com
(プレス担当:岡戸麻希子)
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作家プロフィール

菅 木志雄

1944年岩手県盛岡市生まれ。1968年多摩美術大学絵画科を卒業。現在静岡県伊東市で制作活動を行なっています。

菅木志雄は、60年代末〜70年代にかけて起きた芸術運動「もの派」の主要メンバーであり、同時代を生きる戦後日本美術を代表するアーティストとして、独自の地平を切り開いてきました。 インド哲学などの東洋的思想に共鳴した自身の哲学を基に、石や木、金属といった「もの」同士や、空間、人との関係性に対して様々なアプローチをしかけ、「もの」の持つ存在の深淵を顕在化すべく作品制作をしています。「もの派」への再評価が確固たるものになった今日もなお菅はその思考を深化させ、尽きる事のない制作への情熱が、作品の現在性を生んでいると言えるでしょう。

菅は、1968年の初個展から現在に至る50年以上のキャリアの中で幾多もの展覧会に出展してきました。近年の大規模な展覧会として、2016年イタリア、ミラノのファンデーションPirelli HangarBicoccaでの展覧会をはじめ、イギリス、スコットランド国立近代美術館でのカーラ・ブラックとの二人展、アメリカ、ニューヨークのDia Art Foundationでの個展と、欧米の美術館において連続して展覧会を開催。2017年第57回ヴェネツィアビエンナーレ国際展「VIVA ARTE VIVA」では水上でのインスタレーションとして代表作「状況律」を再制作して大きな注目を浴び、同年長谷川祐子氏キュレーションによるフランスのポンピドゥ・センター・メッスで開催された「ジャパノラマ 1970年以降の新しい日本のアート」展にも出展しました。
国内では、2014年 – 2015年ヴァンジ彫刻庭園美術館にて「菅木志雄展」、2015年には東京都現代美術館にて「菅木志雄 置かれた潜在性」と、2つの個展が同時期に開催され大きな話題となりました。作品は国際的にも高い評価を受けており、ポンピドゥ・センター、テート・モダン、ダラス美術館、ディア美術財団、ニューヨーク近代美術館、ハーシュホーン美術館彫刻庭園、M+や、東京国立近代美術館、東京都現代美術館をはじめ、国内外幾多もの美術館に収蔵されています。

その他の情報は、下記URLよりご覧下さい。
https://www.kishiosuga.com/

  • Installation view from “Not Being Present, Not Being Absent” at Tomio Koyama Gallery, Tokyo, 2022 ©︎Kishio Suga photo by Kenji Takahashi
  • Installation view from “Not Being Present, Not Being Absent” at Tomio Koyama Gallery, Tokyo, 2022 ©︎Kishio Suga photo by Kenji Takahashi
  • Installation view from “Not Being Present, Not Being Absent” at Tomio Koyama Gallery, Tokyo, 2022 ©︎Kishio Suga photo by Kenji Takahashi
  • Installation view from “Not Being Present, Not Being Absent” at Tomio Koyama Gallery, Tokyo, 2022 ©︎Kishio Suga photo by Kenji Takahashi
  • Installation view from “Not Being Present, Not Being Absent” at Tomio Koyama Gallery, Tokyo, 2022 ©︎Kishio Suga photo by Kenji Takahashi
  • Installation view from “Not Being Present, Not Being Absent” at Tomio Koyama Gallery, Tokyo, 2022 ©︎Kishio Suga photo by Kenji Takahashi
  • Installation view from “Not Being Present, Not Being Absent” at Tomio Koyama Gallery, Tokyo, 2022 ©︎Kishio Suga photo by Kenji Takahashi
  • Installation view from “Not Being Present, Not Being Absent” at Tomio Koyama Gallery, Tokyo, 2022 ©︎Kishio Suga photo by Kenji Takahashi
  • Installation view from “Not Being Present, Not Being Absent” at Tomio Koyama Gallery, Tokyo, 2022 ©︎Kishio Suga photo by Kenji Takahashi
  • Installation view from “Not Being Present, Not Being Absent” at Tomio Koyama Gallery, Tokyo, 2022 ©︎Kishio Suga photo by Kenji Takahashi
  • Installation view from “Not Being Present, Not Being Absent” at Tomio Koyama Gallery, Tokyo, 2022 ©︎Kishio Suga photo by Kenji Takahashi
  • Installation view from “Not Being Present, Not Being Absent” at Tomio Koyama Gallery, Tokyo, 2022 ©︎Kishio Suga photo by Kenji Takahashi
  • Installation view from “Not Being Present, Not Being Absent” at Tomio Koyama Gallery, Tokyo, 2022 ©︎Kishio Suga photo by Kenji Takahashi
  • Installation view from “Not Being Present, Not Being Absent” at Tomio Koyama Gallery, Tokyo, 2022 ©︎Kishio Suga photo by Kenji Takahashi
  • Installation view from “Not Being Present, Not Being Absent” at Tomio Koyama Gallery, Tokyo, 2022 ©︎Kishio Suga photo by Kenji Takahashi
  • 中空積状 Internal Void and Accumulated Situation 2022 wood, acrylic h.119.8 x w.90.0 x d.23.0 cm ©︎Kishio Suga
  • 中空積状(部分) Internal Void and Accumulated Situation (close-up) 2022 wood, acrylic h.119.8 x w.90.0 x d.23.0 cm ©︎Kishio Suga
  • 方無位 Direction Without Units 2022 wood, acrylic, galvanized iron h.62.1 x w.40.3 x d.15.3 cm ©︎Kishio Suga
  • 依向化 Dependent Orientation in Formation 2022 wood, acrylic, ink h.183.1 x w.136.4 x d.10.2 cm ©︎Kishio Suga
  • 縁空 Edges of Void 2022 wood, acrylic h.119.6 x w.90.0 x d.9.7 cm ©︎Kishio Suga
  • 場況 Site of Conditions 2022 wood, acrylic h.120.5 x w.90.0 x d.14.7 cm ©︎Kishio Suga
  • 場律 Site of Order 2022 wood, acrylic h.119.8 x w.90.1 x d.15.5 cm ©︎Kishio Suga