シュシ・スライマン

「Sulaiman itu Melayu (Sulaiman was Malay)」

Negara, 2012-13 mixed media 183.0 x 244.0 cm ©Shooshie Sulaiman

【作品紹介】

シュシ・スライマンは平面作品、インスタレーション、パフォーマンスから執筆活動、また新しいアート体験を提供するギャラリーや書店などのスペースの運営に至るまで、幅広いアプローチで制作活動を行っています。それは彼女にとって、アートと人生とは分ち難いものであるということを示しています。
文化的、社会的仕組みやアイデンティティについての探求の旅を続ける中で、彼女の作品の多くは自身をとりまく状況や体験、過程に基づいて制作されますが、時としてそれら自体が作品の重要な一部となります。《Emotional Library(エモーショナル・ライブラリー)》(2007年、ドクメンタ12、カッセル・ドイツ)でスライマンは、カーテンで仕切られた空間に自身のスケッチブックなどを2冊置き、そこへ観客を招き入れて会話を交わすことで関係を築きました。そしてその試みは《Emotional Baggage – Drawings as Performance(エモーショナル・バゲージ:パフォーマンスとしてのドローイング)》(2008年、東京国立近代美術館、東京)へと続きます。この作品でスライマンは、本の詰まったスーツケースをどこへ行くにも持ち歩き、人々と正直で自然発生的な交流をしました。感情のレベルでの取り組みや親密さ。それは彼女の多様な作品に共通するように思えます。
また彼女はありふれた素材を使い、表現は真摯です。しかし1990年代の初期の作品が当時のマレーシアの社会的変化に共鳴していたように、彼女の表現は豊かで多面的であり、より広くて深い歴史、文化、そして人間の経験や想像力の地平を明らかにしています。

【展覧会について】

テキスト:メラニー・ポコック
初めての個展開催にあたり、シュシ・スライマン はアイデンティティの概念を深く考察しています。「Sulaiman itu Melayu(スライマンはマレー人)」と題された本展では、彼女の亡き父親を中心に扱いながら、ドローイング、コラージュ、サイト・スペシフィックなインスタレーションを通じて、いかに東南アジアおよびマレー文化が構築され、受け止められてきたかを探求しています。文化的枠組みが形成されるプロセスをなぞりまた解体することで、本展の作品は、アイデンティティの先天性に対してだけではなく、彼女の個人的歴史に対する自身の仮定に対しても挑戦しています。スライマンは彼女特有の結果を設定しない自由なアプローチで、人生の複雑さをアートのそれと結びついたものとして提示します。
今回の展覧会のために、シュシは父親の墓から取った土、彼女のドローイングと以前使用していたスタジオでありインスタレーション作品でもある、《Rumah》(2002-8)を燃やした灰を混ぜ合わせて作品を制作しました。この作品で、シュシは《Rumah》(後に2011年のシンガポールビエンナーレにて作品《Rumah Sulaiman di Belakang Kedai》の一部として発表された)の「ポスト・プロダクション(制作後)」の行為から、同じ素材における主題と物質的側面の価値をオーバーラップさせながらも、ある種の「ポスト・プロセス(過程後)」の行為へと変化させています。
小山登美夫ギャラリーシンガポールのため特別に制作した《Sulaiman bought a home(スライマンは家を買った)》は、彼女の父親が家族のために初めて買った家のレプリカです。人が亡くなったときに暗唱されるコーランの一節、「Surah Al-Fatihah」がジャワ語で刻まれたこの作品は、安らぎに満ちたイスラム教徒マレー人家庭を浮かび上がらせます。《Sulaiman was a rubber tapper(スライマンはラバー・タッパー*だった)》は、彼女の実家(マレーシア・ジョホール州、セガマ)に残っているゴムの木の樹液から作ったシートで制作。これらの作品を通して、シュシは人間と自然の関係を探求し、彼女自身の父親からの「独立の儀式」に取り組んでいます。
* Rubber Tapper(ラバー・タッパー)…木に穴をあけ、ゴムの樹液を集める人。
その他、日本占領時(1941-45)のマレーシア紙幣を用いた作品、昔のマレー人のイメージを重ねた封筒のコラージュ作品などが出展されます。アーティストに手を加えられることによって、これらの作品は物自体が内包するエネルギー、そして文化的認識がつくられる際の問題などを浮き彫りにします。
また、小山登美夫ギャラリーシンガポールでの展示の一部として、シュシはマラッカのゲストハウス、「12レジデンス」をオープンします。そこでゲストは予測できないようなアートを経験することができるでしょう。

【発行予定の刊行物】

展覧会開催中には、現在に至るまでのシュシの制作活動をカバーするカタログ(編集:キュレーター/ライターのメラニー・ポコック)が発行されます。「Sulaiman」と題された同書にはジェニファー・ハナム・ダダミア氏、ハスヌール・J・サイドン氏、トレヴァー・スミス氏やラッセル・ストーラー氏らが寄稿します。

  • Sulaiman bought a home, installation view from "Sulaiman itu Melayu / Sulaiman was Malay" at Tomio Koyama Gallery Singapore, Singapore, 2013 ©Shooshie Sulaiman, photo by Wong Jing Wei
  • installation view from "Sulaiman itu Melayu / Sulaiman was Malay" at Tomio Koyama Gallery Singapore, Singapore, 2013 ©Shooshie Sulaiman, photo by Wong Jing Wei
  • Sulaiman bought a home, installation view from "Sulaiman itu Melayu / Sulaiman was Malay" at Tomio Koyama Gallery Singapore, Singapore, 2013 ©Shooshie Sulaiman, photo by Wong Jing Wei
  • Sulaiman bought a home, installation view from "Sulaiman itu Melayu / Sulaiman was Malay" at Tomio Koyama Gallery Singapore, Singapore, 2013 ©Shooshie Sulaiman, photo by Wong Jing Wei
  • installation view from "Sulaiman itu Melayu / Sulaiman was Malay" at Tomio Koyama Gallery Singapore, Singapore, 2013 ©Shooshie Sulaiman, photo by Wong Jing Wei
  • Dari Tanah dia Kembali #6 (From the land he emerged #6), 2013 mixed media 38.5 x 28.0 cm ©Shooshie Sulaiman
  • Dari Tanah dia Kembali #3 (From the land she emerged #3), 2013 mixed media 38.5 x 28.0 cm ©Shooshie Sulaiman
  • Mentari dan Hujan (The sun and the rain), 2013 mixed media 30.0 x 38.5 cm ©Shooshie Sulaiman
  • Chin Tu, 2012 image transfer and graphite 9.0 x15.0cm ©Shooshie Sulaiman
  • , 2013 image transfer and graphite 9.0 x 15.0cm ©Shooshie Sulaiman
  • Institusi Langsat (Langsat Institution), 2013 image transfer and graphite 9.0 x 15.0 cm ©Shooshie Sulaiman