サイトウマコト

「2100」

Neural Network_1 2017, oil on canvas, 215.0 × 163.0 cm ©Makoto Saito

小山登美夫ギャラリーではサイトウマコトの新作展「2100」を開催いたします。

【アーティスト、展覧会について】
世界的なグラフィックデザイナーからファインアーティストへ 、大胆で斬新な表現を続けるサイトウマコトの挑戦
1980〜90年代、グラフィック・デザイナーとして既存の常識を破り、シンプルかつ力強い表現力で国内外で高い評価を受けて来たサイトウマコト。ワルシャワ国際ポスタービエンナーレ展金賞など数々の賞を受賞し、作品はニューヨーク近代美術館、サンフランシスコ近代美術館、ヴィクトリア&アルバートミュージアムをはじめ30以上の美術館にコレクションされてきました。
しかし、サイトウはデザインの活動と決別して本格的に絵画の制作を始め、2008年には金沢21世紀美術館において国内初の大規模個展「サイトウ・マコト展:SCENE[0]」を開催しました。本展は、2011年に開催した「蜜が蜂を呼ぶように。 Like Nectar Attracting Bees」以来小山登美夫ギャラリーでは6年ぶり2度目の個展となり、新作約7点を発表する予定です。

【作品に関して】
サイトウマコトのデジタルとアナログが交差した新しい絵画空間
私たちはサイトウマコトの新作の前に立つと、まずドットを用いた描法と、絵具の有機的な凹凸、そしてそれらの密度と圧倒的な物質感に眼を奪われます。このドットは、印刷の4色分解で使われる網点(あみてん)からイメージを紡ぎ出すというサイトウの長年の経験と、コンピュータが画像を作り出すデジタルな方法との共通点といえるでしょう。しかし、そこにサイトウは、デジタルではできない、アナログな方法で途方もない時間をかけて、絵具で絵画に肉体を取り戻そうと試みます。

まずモチーフをデジタルで様々な網点に加工し、膨大な網点のデータの重ねあわせ、組み合わせを幾多も繰り返す。そうして新たなノイズや触覚を感じさせる化学反応を呼び起こし、フォトドローイングと呼ばれる下絵を作り上げる。そこから油絵具を、限定した8色のグリーン、ブルー、濃いブルー、ピンク、赤、黄、最後は白、黒と、一色ごとに網点に色をおいていきます。
こうした気が遠くなる程の絵具の細かな積み重ね、盛り上がりにより、平面的なフォトドローイングから、モチーフとテクスチャーの重層的なイメージが作り出されていくのです。サイトウ自身「感覚だけでは絶対にできない」というこの複雑で周到な表現方法は、これまでにない全く新しい絵画空間を作り出しているといえるでしょう。

崩壊され、再構築されたフロイトとベーコンのポートレート
そして、近くでは絵具の集積でしかない抽象的な表面から遠ざかっていくと、次第にドットがイメージを結びはじめます。作品のなかのモチーフは、サイトウが「感情移入する対象」であると捉える、ルシアン・フロイト、フランシス・ベーコンのポートレイト。サイトウは、様々な人たちの顔や目から性格を読み取り、「人」として興味がある人物の顔をとりあげ、幾度となく試行錯誤した結果、作品として昇華できる「何をしても耐えられる顔」としてフロイト、ベーコンを選び出し、制作してきました。

評論家の浅田彰は、サイトウ作品を次のように評しています。
「網膜に焼きつけられたイメージが無意識の記憶の流れの中でいつしか怪物的な変容を遂げるように。とくに、明確な輪郭や特徴を失い、動物へ、昆虫へ、煙へ、つまりは人間ならざるありとあらゆるものへと生成変化を遂げる顔、無残につぶされてなおわれわれに直面することをやめない顔。その結果として立ち現れるのは、あまりに強烈であるがゆえに無数のゴーストを伴い、われわれの眼前でも変容することをやめないイメージ」
(浅田彰「グラフィック・デザインの廃墟からの絵画の誕生」、「サイトウ・マコト展:SCENE[0]」カタログ、金沢21世紀美術館、2008年)

人間自体の崩壊への危機感、表現の探求、挑戦
サイトウはそうして人間の内奥の感情をえぐり出し、新たな人間像を露にしようとするのです。
サイトウ自身も危惧している、人工知能(AI)に対する未来の動きや、人間自体の崩壊の危機感を強く抱かせる現代において、サイトウの「顔」に潜む人間としての根底を表現しようとする欲望が、鑑賞者にとってどう見えるのか。サイトウマコトの、真に迫る表現に対する尽きることのない探求、挑戦を是非ご高覧ください。

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プレスに関するお問い合わせ先:
Tel: 03-6459-4030 (小山登美夫ギャラリー オフィス)
Email: press@tomiokoyamagallery.com (プレス担当:岡戸麻希子)
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作家プロフィール

サイトウマコト

1952年福岡県生まれ。1970年代よりグラフィック・デザインに携わり、デビュー当時からその活動は国内外で注目されました。ワルシャワ国際ポスタービエンナーレ展金賞(2回)・銀賞・特別賞(2回)、ラハティ国際グラフィックビエンナーレ展グランプリ、ニューヨークADC金賞(5回)、87年度毎日デザイン賞など、代表的な国際デザイン賞において驚異的な受賞歴を持ち、1944年創刊の歴史あるグラフィックデザイン専門誌「Graphis」からは、マスターの称号を受けています。作品はニューヨーク近代美術館、ヴィクトリア&アルバート美術館、東京国立近代美術館など世界30以上の美術館がコレクションしており、特にサンフランシスコ近代美術館は約80点も所蔵しています。
絵画の制作に関しては、1977年から1989年まで現代日本美術展、日本国際美術展等に出品し、1979年と1987年に兵庫県立近代美術館賞を受賞。2003年から本格的に再始動し、2008年には金沢21世紀美術館で画家として初めての展覧会「サイトウ・マコト展:SCENE [0]」を行いました。その他、主な個展に「蜜が蜂を呼ぶように。 Like Nectar Attracting Bees」(小山登美夫ギャラリー、東京、2011年)、「Face to Face / Composition」Paul Kasmin Gallery、ニューヨーク、2012年)、主なグループ展に「ソンエリュミエール – 物質・移動・ 時間」(金沢21世紀美術館、石川、2012年)があり、本展「2100」は、小山登美夫ギャラリーにおいて6年ぶりの待望の個展となります。

  • Neural Network_10 oil on canvas, 215.0 × 163.0 cm 2016 Private Collection, Japan ©Makoto Saito
  • 満ち足りた日々。Days of Fulfillment. 2017, oil on canvas, 215.0 × 163.0 cm ©Makoto Saito