蜷川実花

「残照 /Eternity in a Moment」

『残照』 まえばしガレリアでの展⽰⾵景 ©︎mika ninagawa

近年継続して、意欲的に映像作品を発表している蜷川実花。
本展では、初公開となる最新の立体作品「残照 /Eternity in a Moment」を中心に、コラージュ作品やネオン管を用いた写真作品等を展示いたします。

本出展作は、蜷川が、宮田裕章氏(慶應義塾大学教授、プロデューサー)、Enzo氏(セットデザイナー)らと組んでいるクリエイティブチームEiMと共同で制作しました。

本作品は、展示場所となる「まえばしガレリア」の特色や、前橋という土地自体へのオマージュが込められた作品となっています。

2023年春、アートと食文化を発信する暮らしの拠点として開業した「まえばしガレリア」。以前そこには100年以上前から約60年近く映画館が存在し、地域の人々の文化と暮らしの交流拠点でした。
昔製糸業で栄えた前橋が、時を経て再び「アートと食」という新たな価値を生み出し始めています。

生命のサイクル、新たな再生、繁栄と衰退、明と暗、人生や世界の移ろいの無常感、、、
次の宮田裕章氏(慶應義塾大学教授、プロデューサー)のコンセプト文とともに、前橋の地での蜷川の新たな挑戦をぜひご覧ください。

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残照 /Eternity in a Moment

<生命のサイクル>
本作品は、いのちが生まれ散っていく生命のサイクルを、様々な時間軸の中で表現した空間展示です。一方の面では、色鮮やかに咲き誇る様々な花々がいのちの力と多様な豊かさを示しています。もう一方の面では、枯れた花々が落ち、種子が散りゆく様が表現され、生命の終わりと再生の始まりを描いています。この二面性は、美しさとは一瞬にして変わるものであり、しかし新たな再生への道を示すものであるという、生命の一部である死と再生を示しています。

<世界の移ろいと重なるコントラスト>
作品は生と死、繁栄と衰退、明と暗といったコントラストを、私たちの人生や世界の移ろいと重ねています。美しく咲き誇る花々も枯れた花との対比の中で無常感が滲みます。また枯れた花を観察するとただ悲しいだけでなく、次の命の種子を宿す希望が内包されていることも感じることもできるかもしれません。咲く花と枯れた花は美醜によって対比されるのではなく、そのどちらにも美しさがあります。鑑賞者は自身の経験や感情、未来に対する考えを反映させながら作品と向き合うことで、作品の中にある多様な美しさを感じることができるでしょう。

<サイトスペシフィック>
「残照」は、かつて栄え、その後停滞し、これから新しい未来を創ろうとしている前橋への敬意を示した作品でもあります。一面に咲き誇る花々(花の中には前橋ゆかりの植物も含まれています)はかつての栄光の時代を、枯れた花々は一時的な停滞を象徴し、種子の散布は新たな再生と前進を示唆しています。この作品は前橋の歴史、現状、そして未来への希望を視覚的に表現する一方で、さまざまな地域コミュニティに共通する都市のサイクルともつながるコンセプトとなっています。

<まえばしガレリアでの鑑賞体験>
本作品のデザインはまえばしガレリアでの展示を前提にして製作されています。作品は4面がガラスで天井高8mの空間に浮かぶように展示されます。最も人通りが多い通りからはギャラリーの中に色鮮やかな花が浮かんでいるように見えます。鮮やかさに目を奪われてギャラリー内に入って来た人々は、枯れた花が存在感を放つ、作品のもう一つの側面に対峙することになるでしょう。

慶應義塾大学教授
宮田裕章

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Email: press@tomiokoyamagallery.com
(プレス担当:岡戸麻希子)
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