柏原由佳

「空目つむぎ」

Tracking Light Ⅰ 追いかける光 Ⅰ 2016 tempera and oil on canvas 160 × 120 cm  ©Yuka Kashihara

柏原由佳は、油絵の具を日本画のように薄く溶き、何層にも重ねることで独特な深い色彩を作り出します。彼女の作品世界では、現実の景色と内なる想像の空間がゆるやかに編み込まれて存在します。その背景には、日本を離れ渡独して制作を続ける彼女の、内と外の「距離」への興味があります。ドイツと日本の物理的な距離、それぞれの文化間での精神的な距離、また日本人としての自分と、ドイツにいる自分との距離。それは彼女が作品で繰り返し取り上げる洞窟、穴、山、湖といったモチーフを、内省的な思索をシンボリックにあらわすものへと昇華し、大地にひそむ根源的な自然のエネルギーをも喚起させるのです。本展タイトルにある「空目」とは、本来「そこに存在していないものを見たと認識してしまう事」「実際には見ているものを見ていないふりをする事」という意味であり、「空目つむぎ」とは、時空間や日常の出来事、記憶を超えた捉えようのない景色を絵画作品としてつむいでゆく、柏原の制作に対する独自の視点を象徴的に表す造語となっています。小山登美夫ギャラリーでは 4度目の個展となる本展。透明性と独特な濃密さが共存した、生命力溢れる柏原由佳の作品世界を是非ご高覧下さい。

誰かと一緒に、あるひとつの景色を見たときに、その人の見ていたものと、私の見ていたそれは、違うものだった。
その間にある隙間のずれを探りながら、埋めるような作業が続く。
追いかける光。彷徨う隙間。
「ある夜空の星を探すときに、まっすぐ見てはいけない。目の端で捉えるように追いかけると、光はぐんと輝きを増す」と、何かの本で読んだ。
星を追いかけることは、絵を描くことと少し似ている。
場所も時間も距離も、それぞれ異なる場所たちは、私の中にあった小さな数々の出来事や 記憶を通り抜ける。そして新しい景色が現れた時、少しだけ世界に近づけたような気がした。
幾重にも重なり合うそのずれていく隙間を捕まえないように、そっと追いかける。
どんどんと、深く深く穴を掘っていき、気が付くと外の世界へ向かっていた。
時間の層、光の隙間、そして記憶の距離が、自分の中にあるであろうはずの追い続けてきた存在に、加わっていく。(柏原由佳)

柏原由佳は1980年広島県生まれ。2006年武蔵野美術大学造形学部日本画学科を卒業。同年渡独し、2013年ライプツィヒ視覚芸術アカデミーを卒業。2015年同アカデミー マイスターシューラー取得(Annette Schröter教授に師事)しました。2008年バウハウス・デッサウにて、同財団研究員Torsten Blumeによるキュレーションの個展「借景」展を開催し、2012年にはVOCA展に出展、佳作賞と大原美術館賞を受賞。小山登美夫ギャラリーでは2011年、2012年、2013年に個展を行いました。2016年9月6日から11月27日には、大原美術館(倉敷市)にて個展「最初の島 再後の山」展を開催致します。

その他の展覧会:
柏原由佳「最初の島再後の山」
2016年9月6日[木]〜 11月27日[日]
大原美術館、倉敷、岡山

作家プロフィール

柏原由佳

柏原由佳は1980年広島県生まれ。2006年に武蔵野美術大学造形学部日本画学科を卒業し、渡独。2012年にはVOCA展に出展、佳作賞と大原美術館賞を受賞しています。同年、ポーラ美術振興財団在外研修員としてドイツにて研修。ライプツィヒ視覚芸術アカデミーを2013年に卒業し、2015年同アカデミーマイスターシューラーを取得しました(Annette Schröter教授に師事)。現在、ドイツ、ベルリンを拠点に制作活動を行なっています。

主な個展に、「借景」(バウハウス・デッサウ財団研究員Torsten Blumeによるキュレーション、バウハウス・デッサウ、ドイツ、2008年)、「最初の島 再後の山」(大原美術館、岡山、2016年)などがあり、小山登美夫ギャラリーでは2011年、2012年、2013年、2016年、2019年と5度の個展が開催されました。

柏原由佳は、透明性と濃密さが共存した、生命力溢れる独特な作品世界をつくりあげています。
彼女の絵画制作は、西洋の伝統的な古典絵画技法に基づき、半油性下地を独自の配合で混ぜ合わせてキャンバスに塗りこむ作業からはじまります。そこでできあがったオリジナルのキャンバスの上に、油絵の具を日本画のように薄く溶き、同時にテンペラ絵具も用いながら描いて独特な深い色彩を表現するのです。

柏原の作品には、現実の景色と内なる想像の空間がゆるやかに編み込まれて存在します。その背景には、日本を離れ渡独して制作を続ける彼女の、内と外の「距離」への興味が介在しているといえるでしょう。ドイツと日本の物理的な距離、それぞれの文化間での精神的な距離、また日本人としての自分と、ドイツにいる自分との距離。それは彼女が作品で繰り返し取り上げる洞窟、穴、山、湖といったモチーフを、内省的な思索をシンボリックにあらわすものへと昇華し、大地にひそむ根源的な自然のエネルギーをも喚起させています。

出版物
http://tomiokoyamagallery.com/publications/artist-meets-kurashiki-vol-14-book/

http://yukakashihara.com