桑原正彦

「土地開発」

【作品紹介】

今までの3回の個展を振り返ると、桑原正彦の作品変化の一端をたどることができます。97年「棄てられた子供」では、ゲームセンターの景品で積まれているヌイグルミのようにキッチュで、しかしよく見るとどこかしら奇形を伴った、不可思議な動物たちのペインティングが出展されました。その色使いは人工的な毒気を含み、人々に愛される為に生まれたポップなキャラクターというよりは、無名のまま消費され、うち捨てられる運命にある余剰な産物の物悲しさを漂わせていました。
99年「眺め」では、ペインティングに加えて彫刻も登場します。色彩は淡いトーンに変わり、動物達の輪郭は以前よりもぼやけて、工場廃水を連想させるようなくすんだ水たまりの背景と同化するものも現れました。彫刻は白く着色された粘土でできており、崩れた肉塊のようなフォルムの所々には、黒い髪の毛の束が埋め込まれていました。そして01年「暮らしと膿」では、同様の彫刻と、ペインティングでは少女のヌードと抽象的な風景画とを併せて展示しました。少女達は扇情的な表情を浮かべながらも、肉感的なメッセージを直接発することはなく、またその背景だけが抽出されたかのような風景画は、彼岸世界の美しい花畑のようにも、或いは何か有機的な細胞、体液が滲みだしている様子にも見えました。

【展覧会について】

桑原の作品に一貫して表現されるのは、現代社会に渦巻いている暗い欲望と、この時代に身を浸して生きている私達によぎる、ある虚しさのようなものです。本展タイトルにもなっている<土地開発>とは、開発という名の元に実は壊れていく、荒廃していくものの存在を暗示しています。
メッセージや物語の意味が危ぶまれる現代において、彼の作品世界は言葉を拒否し、全てのモチーフがまず乾いた風景としてただ存在しています。桑原自身が「奇妙なアイデアで溢れているこの世界の一部を描いていきたい」と語るとおり、その作品が描く空気は、捕らえ所の無い独特の距離感、常識や通説からの強いねじれで満ちています。本展では、大小併せて20点近くの新作ペインティングが展示される予定です。

作家プロフィール

桑原正彦

桑原正彦は1959年東京都生まれ。小山登美夫ギャラリーでの個展は、1997年「棄てられた子供」、1999年「眺め」、2001年「暮らしと膿」、2005年「土地開発」、2007年「夏の終わりに」、2008年「窓」、2010年「とても甘い菓子」、2012年「夢の中だけで」、2015年「あかるい日」、そして今年2017年「fantasy land」で10度開催しており、アメリカ、サンタモニカのRichard Heller Galleryでも、2001年、2008年と2度の個展を開催しています。

主なグループ展に、「TOKYO POP」(平塚市美術館、神奈川、1996年)、「The Japanese Experience – Inevitable」(Ursula Blickle Stiftung財団、クライヒタール、ドイツ、2002年、以降ザルツブルグ近代美術館、オーストリア、2004年へ巡回)、「POPjack: Warhol to Murakami」(デンバー現代美術館、アメリカ、2002年)、「Japan Pop」(ヘルシンキ市立美術館、フィンランド、2005年)、「ポートレート・セッション」(広島市現代美術館、広島 / ナディッフ、東京、2007年)、「Pathos and Small Narratives」(Gana Art Center、ソウル、韓国、2011年)などがあります。