<作品紹介>
染谷悠子はパネルにキャンバス、そして和紙を張り、そのやわらかな風合いを生かしながら、繊細な筆致と色彩で架空の世界を描きます。登場するモチーフの多くは花や鳥、樹木、動物ですが、これらはまず「言葉を綴るように、鉛筆を動かしていく」と語る作家によって、淡く細密画のように細かい線で形づくられます。そして版画用のインクであるリトインク、ストックされているという色をつけた和紙、時には水彩で、濁らないよう入念に色が重ねられていきます。
その繊細さ、綿密さとは一見対照的に、画面上には十分な余白がとられています。それによってモチーフはある種の浮遊感を与えられ、それらが紡ぐ物語、そしてその続きへと、鑑賞者を誘うかのように強い輝きを放ちます。
<展覧会について>
展示作品のひとつである「薔薇の花の枯れる時をおそれる」について、染谷はこんな言葉を寄せています。「薔薇の花達に身をよせている白い生き物がいる。薔薇の花にまぎれて臭いを消し、花の姿に憧れをもち、羨んで花を嫌い、自分の場所だと支配する。心は矛盾でグラグラ動いているのにそこから動かない。その白い生き物は(絵の)外に目線を向けている」。
このほか、本展では白いバクと蝶が登場する横360cmにおよぶ4枚組の作品を含めた、約6点の作品を展示いたします。この機会に是非ご高覧ください。