川島秀明

「wavering」

Installation view from “wavering” at Tomio Koyama Gallery, 2008
 ©Hideaki Kawashima

【作品紹介】

川島秀明が描き続けるポートレートは、肉体を持たない人間の、抽象化された魂の姿であるように見えます。背景は無く、ふわりと空中に浮いているかのような数々の顔と相対するにつけ、私たちはその強いまなざしに吸い込まれ、自分の心の奥底をのぞかれるような緊張感と同時に、祈りを捧げる空間にいるかのような安らぎを覚えます。
95年から2年間、比叡山延暦寺にて天台宗の仏道修行を経験した川島は、日々の営みとして絵を描くことを選びました。両性具有的な、表情だけが抽出されて何者かに憑依しているようなモチーフを、作家は「自画像を描くような気持ちで」描いています。様々な形態に変化しながらも繰り返し執拗に描かれるこれらの肖像は、いかに普遍的な真理を追い求めていても決して拭い去ることのできない「自己」という怪物を、真摯に見つめ続ける作家の記録であるのかもしれません。

【展覧会について】

本展では、8-10点の新作ペインティングを展示致します。「今回は少し距離を置いて、様々な表情を演じているよう」と作家は語ります。
タイトルの”wavering”は、精神的なよろめき、揺らぎ、というニュアンスの言葉です。心の鏡に向かってポーズをとってみるような作家のひそやかな実験を、どうぞご高覧ください。