私が戸谷誠さんを知ったのは、2021年NHKのテレビ番組でした。森山直太朗さんが旅人として出てきた「no art, no life ー令和三年 表現者たちの幻想曲」で、永遠に終わらない絵を描き続ける人として戸谷さんは登場しました。その執拗に描く姿にも驚いたのですが、やはりそこにあった絵自体に魅了されて、その絵が見たいと思い、知人を通じて戸谷さんに連絡をとってもらい、制作現場である古い薬局のあとに行きました。
そこには夥しい数の絵の蓄積があり、1枚の絵が何年にも渡って描かれることもあるとのこと。絵とともに、本棚には古今東西の本があり、制作の合間に何度も読み返していると戸谷さんは言っていました。どのように絵の題材が選ばれ、構図が決められ、どのように線を始め、色を塗るのかは全くわかりません。心や手が赴くままなのか、そこに思想があるのかもわからない。でも、その奇妙なファンタジーにあふれた絵は、カラフルで少しポップで少しユーモラスで、ちょっとエッチで、ときどき宗教的なイメージも出てくるけど、明るい絵が多いです。彼に見えている世界は、幸福感にあふれていると感じてしまいます。
描いても描いてもやめられない、絵を描くことの楽しさを50年以上にもわたって続けていることの凄さが作品には出ていると思います。是非、見てもらいたいと思い、展覧会を開催します。ご高覧ください。
小山登美夫
【戸谷誠】
1944年生まれ、東京都在住。
多摩美術大学油画科を卒業後、父親が開業した薬局で自分だけの絵を描く生活を始める。
1970年に京都の画廊で初個展して以来、定期的に発表を続けている。
50代半ばには薬局を閉店し、現在も絵を描くことに没頭する日々を送る。
【戸谷誠に関する番組・記事】
[テレビ番組]
NHK「no art, no life ー令和三年 表現者たちの幻想曲」
2021年4月17日放送
https://www.nhk.jp/p/nanl/ts/N3WLV23WVY/episode/te/P81YZG19Z8/
NHK「no art, no life」
2020年2月25日放送
https://www.nhk.jp/p/nanl/ts/N3WLV23WVY/episode/te/MXR81JKXRL/
[YouTube]
『【東京・戸谷誠】絵に捧げた人生』
取材:アウトサイダー・キュレーター 櫛野展正氏
https://www.youtube.com/watch?v=rBF9gjIfvGg
[Web記事]
美術手帖『「櫛野展正連載「アウトサイドの隣人たち」:閉ざされた薬局で絵と対峙する暮らし 第31回』
https://bijutsutecho.com/magazine/series/s6/22498
ROADSIDERS’ weekly
都築響一 編集後記 2015年12月16日 Vol.192
https://roadsiders.com/afterhours/detail.php?id=192
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