福永大介

To have something as support

ECSTASY 2010 oil on canvas 227.5 × 182.0 cm ©Daisuke Fukunaga

作品紹介

福永大介は、身近にありながら普段私たちが目にとめることもない取り残された場所、誰からも忘れ去られたような物を描きます。うらぶれた空き地、建築中のビルのまだ電気工事もされていない地下室や、モップなどの使い古された掃除用具、タイヤ、地面にとぐろをまいた水道ホース、廃棄物など。「タイヤやモップが置かれている様が、そこだけ時間のずれている、抜け落ちているような印象を感じ、それがとてもドラマティックに思える」と話す福永のペインティングのなかでは、それらの物たちは、通常付与されている使用価値を脱ぎ捨て、感情や人格すら得たかのようにそれら自身で存在しています。
終末感を思わせる背景とこの擬人的表現によって福永のペインティングは、物語の、あるいは演劇的な強い喚起力をもっています。虚構と現実が溶解し、そこにたちあがる濃密な感覚。それは「現実に自分が見て、強く印象に残ったものをもとにして描く」という福永の、シンプルかつ真摯な制作動機によってこそ生み出されるといえるでしょう。

展覧会について

本展で展示される約10点の新作ペインティングには、これまで福永の作品には登場したことのなかった、人物たちが描かれています。彼らについて福永はこう話します。
「例えば空虚なとき、無目的なとき、辛いときやどうにもならないとき、自分を慰める為に行う、人それぞれが拠り所にしている領域での振る舞いや表現方法。それは自分に何かを憑依させることのようで、『何かを味方にすること』なのだと思います。そうすることによって、豊かに存在している状態を過ごす人々を描いています。これらの人々は実際に出会った人や、自分の空想、理想とする人物でもあり、またおそらく自画像でもあると思います。」
福永の描く、一見したところ滑稽でアウトサイダーのように思えるこの人物たちは、根源的な生の強さを感じさせるようです。是非ご高覧ください。

  • installation view from "To have something as support" at Tomio Koyama Gallery, Tokyo, Japan, 2011
  • installation view from "To have something as support" at Tomio Koyama Gallery, Tokyo, Japan, 2011