桑久保 徹

「The Flower of Hole in the Sand」

installation view from [The Flower of Hole in the Sand] at Tomio Koyama Gallery, 2005 © Toru Kuwakubo

【展覧会について】

桑久保 徹は1978年 神奈川県、座間市生まれ。2002年多摩美術大学絵画科油画専攻卒業。現在も東京を拠点に活動を行っています。2002 年、東京都現代美術館主催のトーキョーワンダーウォール公募2002で「トーキョーワンダーウォール賞」を受賞。2004年のGEISAI-5にて、小山登美夫がスカウトしました。
彼は自分の中に架空の画家を見いだすという演劇的なアプローチで制作活動をスタートします。印象派の画家たちが行ったように海辺にイーゼルを立てて絵を描いたり、描いた絵を背中にくくりつけて「絵を売り歩く放浪画家」としてパフォーマンスしたりと、彼がイメージするいわゆる「画家」「絵描き」をいわば演じてみる、「敢えて『画家宣言』をする」(作家談)ことが、最初の制作のきっかけになりました。
画家に扮した彼が好んで描くようになったのは、多くが海のモチーフです。オイルを混ぜず、油絵の具だけを分厚く盛り上げて描いていくタッチは、現代美術というよりも明らかにゴッホの作品を想起させます。「絵というものが現代美術では攻撃対象になることもあるけれど、それなら現代美術というのは一体何なのか。美術という名付けえぬもののはずが、どこか現代美術「的」な、言語無しでは理解しがたいものに偏っていはしないか。自分が美術をやっていく上で、(人に素直に喜んでもらえるような)自然な形を考えると絵だと思った」と作家は言います。
現代においてはもはや古典になりつつある印象派の技法と、桑久保自身の中にある現在の心象風景が重なり合って作品を作り上げています。例えば『海の向こうで戦争が始まる』という作品では、砂浜にたくさんの穴が掘られ、それぞれの中から人間の腕が伸び、1輪の花を掲げています。この作品は、戦争や災害が起っても何もできず、ただ身を隠して息を潜めているしかない人間が、せめて花をたむけるという桑久保自身が作った短い小説から得たイメージです。

作家プロフィール

桑久保 徹

1978年神奈川県生まれ。2002年多摩美術大学絵画科油画専攻卒業後、現在も神奈川県を拠点に活動を行う。

現代美術に立ち向かうための方法として、自分の中に架空の画家を見いだし、彼に描かせるという演劇的アプローチで制作活動をスタート。あえて今や古典的ともいえるゴッホのような油絵具の厚塗り技法を用い、現代的心象風景を物語性豊かに描く独自の世界は、国内外で高い評価を受ける。

2014年より、美術史に輝く巨匠の生涯をひとつのキャンバスに込めて描く「カレンダーシリーズ」作品の制作を開始し、2020年ついに完成。
ムンク、ゴッホ、モディリアーニなど桑久保により選ばれた巨匠が12ヶ月にあてはめられ、カレンダーの「月」に見立てられた「カレンダーシリーズ」は、
それぞれの作家たちの作品、スタジオ、人生が桑久保の解釈により壮大な異次元空間として表現され、時空を超えた共鳴が生まれる究極のオマージュ作品となっている。

今までに、ニューヨーク、ロンドン、ベルリン、コペンハーゲン、シンガポール、ソウル、台北、東京など世界各地で個展を行い、
主な展覧会として「サイト -場所の記憶、場所の力-」(広島市現代美術館、2013年) 、「東京画 ll:心の風景のあやもよう」(東京都美術館、2013年)、「VOCA 2012」(上野の森美術館、2012年)、「アーティスト・ファイル 2010 現代の作家たち」(国立新美術館、東京、2010年)、「トーキョーワンダーウォール」(東京都現代美術館、2003年)に参加。

受賞歴に第3回Dアートビエンナーレ最優秀賞 (2013年)、VOCA展2012 奨励賞 (2012年)、第三回絹谷幸二賞(2011年)、トーキョーワンダーウォール賞 (2002年)があり、

作品は、ジャピゴッツィコレクション、第一生命保険株式会社、高橋龍太郎コレクション、高松市美術館、タグチ・アートコレクション、トヨタアートコレクションなど、国内外で数多く所蔵されている。