作品紹介
福井 篤の作品は部屋の中の変哲もない日常の風景を様々な角度からアプローチする方法で、幻想的な世界を展開します。窓の向こうを見渡す事はできても、窓の向こうに行く事はできない、一歩手前で鑑賞者が実際に福井の創った風景をみているような設定を組みこんでいます。
人の心の中のかたちとも繋がる窓のような存在と言えるかもしれません。日常と幻想的なイメージが重なりあうのは現実とのギャップが必要だからと作家は言います。作家本人にとっては「見えているんだけれど、気づかなかった日常」なのだそうです。
展覧会について
今回の小山登美夫ギャラリーでの2度目となる展覧会は6点の中サイズのペインティングと2点の大サイズのペインティングで構成される予定です。
森の風景に女の子が描かれた写実性の高い作品を初めとして、これまでの福井篤の淡い柔らかいタッチの作品や、シャープな作風の両方で描かれています。どれもイメージは夢想的で詩的な感覚を与えますが、そこには福井ならではの、トリックがありスケールという題材が生まれています。
また、最近まで描き続けていた夜の風景から、明るい陽射しをうけた朝のイメージへと変化しつつあります。出展作品すべての絵画には飛蚊症(ひぶんしょう)という目の中に現れる薄い雲のような物質がうっすらと描かれています。これの意図するものは、眼球を通し、鑑賞者が実際に現実と非現実のすき間の世界を見ている設定なのです。
作家プロフィール
福井 篤は1966年愛知県生まれ。東京芸術大学美術学部油画科卒業。現在も東京を拠点に制作活動を行っています。大学卒業後、10年間は美術活動から遠ざかり、バンド活動や現代音楽の作曲など音楽活動をしていました。
1998年より再び制作を開始。2001年の奈良美智キュレイションによる「Morning Glory」展を初め、最近ではいくつかのグループ展で作品を発表しています。主な展覧会に2002年の小山登美夫ギャラリーでの個展、昨年2003年に広島市現代美術館で開催された「絵画新世紀」展に出展、2004年には森美術館で開催された「六本木クロッシング」展にも出展し、ペインティングやドローイング、彫刻といった作品で構成されたインスタレーションを展開しました。
最近ではミュージシャンのデイヴィッド・シルビアンのCDジャケットやツアーカタログへ作品を提供した事でも知られています。