杉戸 洋

「apples and lemon」- 「りんごとレモン」

杉戸洋 “apple and lemons” 2024 drawing on paper 9.0 x 12.0 cm ©Hiroshi Sugito 

この度小山登美夫ギャラリーは、2024年11月2日[土]TODA BUILDING内に、六本木、天王洲に次ぐ3ヶ所目の拠点として「小山登美夫ギャラリー京橋」をオープンいたします。小山登美夫ギャラリー京橋での最初の展覧会は、杉戸洋の個展「apples and lemon」- 「りんごとレモン」です。

日本の現代アートにおいて重要な作家の一人と言える杉戸洋。具象のような抽象のような点や線、丸、三角等のモチーフとみずみずしい色彩のペインティング、立体など、既成概念にとらわれない作品群は国内外で高い評価を受けてきました。

とくに展示空間を五感や身体性でとらえるのは杉戸独自の制作アプローチであり、入念なリサーチ、試行錯誤と時間を重ね、作品同士、作品と空間を呼応し変容しあう伸縮自在な世界観をつくり続けています。

作家にとって弊廊での5年ぶり9度目となる本展は、新作の立体、ペインティングと、活動初期の90年代の作品を組み合わせます。杉戸は今、世の中を、空間をどうとらえ、どう作品にあらわすのか。今回はこれから完成する新しいスペースのため、杉戸自身「スペースのことは考えずに搬入してから考えようと、持ち込んだものがどう見えるか自分も楽しみにしております。」と述べています。

【杉戸洋と本展および新作に関して
ーりんごとレモンの組み合わせ、時を超えた関係性が表す多層で流動的な世界ー

杉戸洋は1970年愛知県生まれ、幼少期はニューヨークで過ごしました。1992年愛知県立芸術大学美術学部日本画科卒業後、山で木を切り畑を耕す生活を送ったのち、1996年より本格的にアーティスト活動を開始。
いままで国内外で多数の展覧会に参加し、2016年豊田市美術館「こっぱとあまつぶ」 、2017年東京都美術館「杉戸洋 とんぼ と のりしろ」など立て続けに美術館での個展を開催。平成29年度芸術選奨文部科学大臣賞を受賞し、現在東京藝術大学美術学部絵画科油画教授を務めています。 

作品のモチーフは、雨粒などごく小さなもの、身近なフルーツ、生の拠り所である家、大きな宇宙まで、世の中に存在するすべてを含んでおり、日常の些細なところにも平等に、むしろ大事に眼を向けます。

本展タイトルにある「apples and lemon」- 「りんごとレモン」は、よく知る同じ球体の果実でも、色も形も別のもの。比較でなくモチーフの組み合わせで何が見えるのかを考えたいという杉戸の思いが込められています。
むいたりんごはレモン果汁をかけると持ちがよく、りんごパイを作るときレモン果汁は大事な隠し味になる。その相性の良さが互いに影響をおよぼす様を感じ取り、その組み合わせを徹底的に追求するのか、りんごとレモンのそれぞれの個性を分析していくのか、杉戸は真摯に検証を続け、自分が体感した知覚を作品に丁寧に表していきます。

また今回、ある展覧会のため未発表の90年代作品を出したことをきっかけとし、自身の90年代ペインティング作品と新作との組み合わせ、そして当時扱ったFRP素材での立体制作という試みも行います。
大学卒業後山奥で畑を耕しながら制作したそのペインティングは、画材もお金も足りなかったのに大きな画面に描いていました。当時と感覚は違えど現在制作していたものと相性がよく面白く見え、視点を変えなにかできないかという気づき。

さらに当時昼間はアルバイトでFRP成形、夜は絵を描き、合間に畑仕事とハードだけど充実した時間だったこと、「さつま芋を根っこごと掘り起こした時の感動を自分の絵と比較してみると呆然とし絵を描くことができなくなってしまった思い出」が蘇り、90年代を象徴するようなFRP素材で果物のモチーフを成形し直すことで、絵との組み合わせを試行錯誤したいと思い至りました。

同じものを時間を経て改めて見、普段知っているものを似て非なるものと並べて気づく新鮮さや新たな視点は、私たちにも共感できる感覚ではないでしょうか。

ものともの、自らに流れる時間と体感、それぞれの存在性が際立つからこそ浮かび上がるその差異と共通項と新しい状況。
杉戸が様々な角度から探求するりんごとレモンの組み合わせ、時を超えた関係性は、見慣れた景色に「豊かな認識のずれ」を生じさせ、私たちがいる場所はもっと多層的で流動的な世界だった、と実感できる楽しさ、喜び、自由に満たしてくれるでしょう。杉戸の最新の作品世界をご覧にぜひお越しください。

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プレスに関するお問い合わせ先(プレス担当:岡戸麻希子)
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