小山登美夫ギャラリーでは、大宮エリー展「Peace within you」を開催致します。本展では大宮が2018年に瀬戸内を旅し、描いた新作ペインティングと、旧作を展示致します。
【大宮エリーについて】
大宮エリーは1975年大阪生まれ、東京大学薬学部卒業。広告代理店勤務後独立し、作家業、舞台の作演出、ドラマ・映画監督、映像制作、ラジオのパーソナリティと様々なジャンルの活動を行ってきました。
2012年からは観客にイメージや言葉を伝え、来場者が参加して作品が完成するという体験型の展覧会を始めます。「思いを伝えるということ展」(PARCO MUSEUMほか、2012–13年)、「生きているということ展」(PARCO MUSEUM、2013年)、「星空からのメッセージ展」(三菱地所アルティアムほか、2013–14年)と個展を開催し、大きな話題を呼びました。
絵画制作に関しては、2012年東京都国立博物館の法隆寺宝物館にてモンブラン国際文化賞受賞の福武總一郎氏へのお祝いとして、急遽ライブペインティングを依頼されたことから始まりました。人生で初めて人前で描いた絵は「お祝いの調べ ”直島”」(現在、福武氏蔵)。そんな驚くべき制作のスタートにおいて、デビュー作品は大好評を得ました。
その後大宮は立て続けに個展を開催します。2015年「emotional journey」(代官山ヒルサイドテラス、東京)、「painting dreams」(渋谷ヒカリエ 8/ CUBE、東京)、2016年には美術館での初の個展「シンシアリー・ユアーズー親愛なるあなたの 大宮エリーより」(十和田市現代美術館、青森)を開催し、同時に街の商店街にも作品を展開しました。2017年「This is forest speaking ~もしもしこちら森です」(金津創作の森、福井)。2018年には「六甲ミーツ・アート芸術散歩2018」に参加し、「とある未亡人の館」を制作、展示。その作品は2019年代官山ヒルサイドテラス ヒルサイドフォーラムでの「Beautiful Days ~美しき日々」にて、新たに制作された大きなインスタレーション作品「ある日のピクニック」と共に発表されました。
2019年2月には、美術出版社から絵と文章で構成された「虹のくじら」を出版、3月には海外のギャラリーでの初個展「A Wonderful Forest」(TICOLAT TAMURA、香港)を開催するなど、制作活動の初期から大きな飛躍を遂げています。
【大宮エリーの絵画】
とかく技術や歴史を重んじがちなアート界のフィールドで、大宮の絵は、大宮エリーという個から発せられた「生の芸術」といえるでしょう。大宮が心打たれた光景を、鮮やかな色彩、激情的な勢いのある筆触で描いた作品は、彼女の感動を伝えるべくキャンバスを超えて空間いっぱいに生気を溢れ出し、観る者を巻き込み元気を与えます。それは圧倒的な強さと躍動感があり、多彩な大宮の自由な想像力は、既成の枠に捉われずアートの可能性をどこまでも広げていくようです。
ベネッセホールディングス名誉顧問の福武總一郎氏は、大宮エリー画集に次のようなメッセージを寄せました。
「明るくリズム感があり素晴らしいです。特に少しアルコールの入った状態での作品は素晴らしいと思います。大宮さんの絵は素晴らしい可能性があります。」
(福武總一郎「大宮エリーさんへのメッセージ」、『ELLIE OMIYA EMOTIONAL JOURNEY』、フォイル刊行、2015年)
森美術館館長の南條史生氏は大宮作品について次のように評しました。
「エリーの作品は、そこに日本的な繊細さと、親しみやすさ、優しさと希望が見て取れる。記号や景色、人や天気、花や動物、家具や花々なんでも主題になる。だから見 る人が、楽しい。それはアートの生み出す一つの重要な価値だ。」
(南條史生「大宮エリーの仕事」、大宮エリー個展「A Wonderful Forest」TICOLAT TAMURA、2019年によせて)
大宮自身、絵について次のように語ります。
「絵だけだった。素晴らしいもの、美しいもの、えもいわれぬものを目の当たりにしたときに『描きたい!描きたい!これを絵にしたい!』そういう衝動に駆られるものは。」
(大宮エリー「無性に、瀬戸内の海が見たくなる、ときがある。」、『BEYOND BY LEXUS』WINTER、Lexus International、2019)
【本展、新作について】
本展で発表する新作は、2018年LEXUS社からの瀬戸内の冊子の制作依頼から端を発します。
大宮が初めて瀬戸内を訪れたのは2006年、ベネッセの美術館でした。2015年の40歳の誕生日に瀬戸内、イサム・ノグチ庭園美術館をひとり訪れ心を奪われた大宮は、瀬戸内での体験を絵にしたいとずっと思っており、今回の件で再訪し実現することになりました。
イサム・ノグチ作品「エナジー・ヴォイド」から大宮が感じた、やわらなか心、小さなしあわせ、小さな平和。いとおしい気持ち。やさしいはかなげなもの。そんなインスピレーションを作品にしたのが、「イサム・ノグチの手紙」の2点です。
「エナジー・ヴォイドは窓だった。両手で作った窓。そしてその奥に私が見たのは、草原。小さな野花が二輪。寄り添うように咲いていたのだった。」
(大宮エリー「無性に、瀬戸内の海が見たくなる、ときがある。」、『BEYOND BY LEXUS』WINTER、Lexus International、2019)
「瀬戸内の海、朝5時43分」、「瀬戸内の海 夕方5時32分」は、2017年に瀬戸内の伯方島を訪れた際に大宮が忘れられなかった光景を絵にしようと、2018年再訪して海を眺めた想いが交錯します。明け方に目撃したエメラルドグリーンの海と空。あの色合いを再び見たいと日の出を待つが、きれいはきれいでもあの日の色ではない。毎回色は違うけれど、海と空の色が同じ色に近づく現象を見ることができ、あの日の色を思い出すには十分でした。海を眺める民宿がまるで船のようで、海に浮かんでいる錯覚とともに、瀬戸内の海の平穏さに心が調律されるようだったと言います。
【本展覧会タイトルについて】
本展覧会タイトルについて、大宮は次のように述べます。
「『Peace within you ーあなたのなかの平和』
イサム・ノグチのエナジー・ヴォイドの、輪の奥に、彼のねがった平和が見えたんです。おだやかで、ちいさな、かけがえのない平和。
原爆反対のメッセージを込めたイサム・ノグチからのてがみのように感じました。
友人と訪れ朝まで飲みあかして宿から見た、せとうちの海。その、平らな水面に、平和を感じました。友人の横顔も、穏やかでした。
あなたのなかの平和。というタイトルはそんなところからきました。」
自然のエネルギーや波動、感動や発見。心躍る体験や、生きている喜び、自由や勇気。大宮作品は日常の喧噪や慌ただしさで忘れがちな、大切なものを思い出させてくれます。自分だけが感じられるような幸せを再発見しに、ぜひお越しください。
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