柔らかな白釉に施されたのびやかに羽ばたくとんぼのレリーフなど、日常の生活に馴染みつつも優美でモダンな岡崎裕子の陶芸作品は、草花や虫、季節の移ろいなど自然の美しさへの感動を表現したアールヌーヴォーの精神にも通じ、丁寧に日々の暮らしを楽しむということを思い出させてくれます。
小山登美夫ギャラリーでの3度目の個展となる今回は、今までの作品にも度々あしらわれてきた花のモチーフをさらに追求し、「幼い頃に見た花の記憶を辿りながら、指紋が残るほどしっかりと一枚一枚自分の指で作った」というPETAL(花びら)がより立体的に施され、200枚もの花びらをまとった鉢や、花に舞う蝶のような、白地に金彩を施した器など約200点を展示します。作家自身、「器の中に広がる世界に、体中で飛び込んで行くような、とても楽しく不思議な経験だった」と語り、その言葉を体現するように生き生きと立ち上がる花びらが、ドレスを飾る繊細なレースのように器を彩ります。岡崎の新たな挑戦となる本展を是非ご高覧下さい。