風能奈々

「水の漏れないうつわ」

扉を探す Looking for a door 2011 acrylic,dye,gesso on canvas φ90.0 cm ©Nana Funo

【作品紹介】

風能奈々のペインティングは、そのマチエールに特徴があります。アクリル絵具の地塗り、染色系のペンによるドローイング、その上から重ねられたジェッソがつくる滲み、また更にアクリルで重ねられるモチーフ。マスキングを繰り返すことによって一枚の画面に重ねられるこれらの層は、描かれている装飾的なパターン、動植物、人物、風景、文字などを包み込み、類いまれな筆触をつくりあげます。
緻密に描かれ反復されるそれらのモチーフは、目眩すら覚えるかのような、まるで画面の縁を超えてどこまでも続いていく万華鏡のようです。2009年に小山登美夫ギャラリー京都で開催した個展「誰がその物語を知る」で展示された4m近い大作においても、同期間中に「草上の想像」(TKGエディションズ京都)で展示した108点にもおよぶ20cm x 20cmの小品においても、その密度と集中力は変わらないということ。それでいて一点一点の個性、深みがそれぞれにあるということ。それは幼少から耽溺していた想像や物語の世界がイメージの資源になっているという風能の、限りのない想像の広がりと深度、またそれをいかに表現するかを知っている作家としての力強さを物語っています。
風能もう一つのイメージの源泉であるドローイング・ノートには、またこれもペインティングと同様の密度でびっしりと描かれています。日々のなかでわき起こる感情や心に残ったこと、その全てが風能によって、ペインティングへの発展を待つイメージへと紡がれていくのです。

【展覧会について】

インスピレーションを得たとき、すぐに描きとめなければ逃げてしまう。それを受け止めるための受け皿、うつわのようなもの。それを本展のタイトル「水の漏れないうつわ」は意味しています。あるアーティストとの対話のなかで、風能は以下のように話しています。

ぶかぶか浮かぶものをすぐに描きうつさないと消えてしまって、なにも残らない。砂漠で手をうつわの形にしてその中に水をすくっている感じというか。ポタポタ垂れてしまったものは、すぐにからからの砂に吸い込まれて乾いてしまう。・・・急いで描きうつす、もしくは水の垂れないような、指の隙間のないような、しっかりしたうつわをずっと探しているような気がします。

本展では、幅5m以上の3枚組の大作から20cm x 20cmの小品までの新作ペインティングを展示するとともに、上述のドローイング・ノート、つまり風能にとっての「水の漏れないうつわ」も、展覧会では始めて展示いたします。是非ご高覧下さい。

作家プロフィール

風能奈々

風能奈々は1983年静岡県生まれ。2006年大阪芸術大学芸術学部美術学科油画コースを卒業後、2008年京都市立芸術大学大学院美術研究科絵画専攻油画修了。現在静岡で制作を行っています。

風能奈々の作品は、風能が幼い頃から愛しむ想像や物語の世界と、高い密度の多様なマチエールが絡み合って、独特で重層的な世界観を生み出しています。鑑賞者は、画面に現れるまるで磁器や彫金を思わせるかのような光沢と、刺繍や織物のような繊細な筆致がアクリル絵具のみで生み出されていることに驚きを覚えるでしょう。

個展は、2010年に六本木ヒルズ A/D GALLERYにて、2012年に「緑の遠吠え」(板室温泉大黒屋、那須塩原、栃木)にて開催、小山登美夫ギャラリーでは2008年、2009年(小山登美夫ギャラリー京都、、2012年、2014年(同年にシンガポールと渋谷ヒカリエの2回)、2016年、2019年に行っています。主なグループ展として「VOCA展 2009」(2009年、上野の森美術館)、「絵画の在りか」(2014年、東京オペラシティ アートギャラリー)があり、作品はアマン東京、ジャピゴッツィコレクション(スイス/アメリカ)、高橋コレクション、高松市美術館、モンブラン GBU ジャパンに収蔵されています。