増井淑乃は1976年静岡県生まれ。1999年多摩美術大学美術学部芸術学科卒業。現在東京を拠点に制作を行っています。増井の作品は繊細で細密な水彩画です。幼い頃の色や匂いの記憶をもとに、時に動物を配した神秘的な風景を表現し、時間をかけ何度も重ねて描かれる画面には、滲みと入念な描線により独特のテクスチュアが生み出されています。生まれた土地との結びつきが断たれた経験により、しばしば浮遊感におそわれるという増井は、描くことでもう一度土地と繋がろうとしているのではと語ります。「誰にでもわかるものを描きたい」という彼女の美しく鮮やかな作品は、ダイレクトに観る者の心をとらえ、どこかで見、感じたことがあるような記憶の中の風景や感覚を思い起こさせるでしょう。本展では新作4点を含めた2010年以降の作品を展示致します。