<作品紹介>
近年の山本の作風には、抽象的な要素と絡み合った絵の具の物質としての力強い存在がみられます。キャンバスに絵の具で描く、ということを目の当たりにする感覚を与えるのです。画面に描かれたものはイメージだけではなく、絵の具という物質としての存在をも主張しています。レリーフ状に盛られたそれは、もはや平面であることにはとらわれず、こういうものがペインティングである、という私たちがなんとなく信じていた約束事によって見えなくなっていたものを見せてくれます。このような進化/変化は、彫刻の出身の山本が、絵画と彫刻を常に並行して制作するなかでおこなう「横断」という試みによって可能になっているのでしょう。
<展覧会について>
今回の展覧会タイトルである「横断」を山本は次のように説明しています。
「画面の中を、作品と作品の間を、そしてまた様々な要素や次元を横断するという事。途中にあるであろう中間の存在。断ちきる事で表れる断面。繋がりや交錯の中で組み上げられていく秩序や、相互関係。これらの横断という意識は私が物を作る上で大事にしている部分です。それは、何かの再現ではない、存在へのアプローチの一つの手段であると考えています。」
この展覧会では新作ドローイング数点と、同じく新作のペインティング12点を展示予定です。絵画でありながらものとして存在するそれらの作品は、イメージの中で色や形の交錯が様々なドラマを起こすことを見せてくれます。