山本桂輔

「起立」

Installation view from “rise” at Tomio Koyama Gallery, Tokyo, 2009 ©Keisuke Yamamoto

<作品紹介>
山本桂輔はペインティングとドローイング、また木彫作品を制作しています。作品では、木や草花、キノコ、小さな妖精のような人影などが、有機的な曲線に巻き取られながら、ひとつのフォルムとしてつながっていきます。 平面作品は不思議なバランスで矩形に区切られ、それぞれの色面は、それ自体で花や昆虫などに見えたり、或は背景の空に見えたり、大きな森の中に隠れている小さな動物を探すように、私たちの視線は画面の中を自由に動き回ります。
彫刻作品もまた、それ自体が森、あるいは建築物の一部であるかのような、イメージの広がりを持っています。身近なモチーフを具体的に取り上げていた初期と比べ、昨今の作品は全ての対象が溶け合ってしまったかのような、より複雑な構図を持っています。
「絵を描くことは、底のない世界をさまようこと。それを見てしまったから、絵画からもう抜け出ることはできない」という作家の言葉どおり、彼の作品で重要なのは描かれる対象ではなく、目に見えないものまで含めた、不確かな世界の断片であるようです。

<展覧会について>
本展では、高さ約5メートルの木彫作品を中心に、新作ペインティングも展示いたします。人物の顔や植物、奇妙な装飾パターンなどが30パーツ近く組み合わさってできる巨大彫刻は、不思議な宮殿のような迫力で見るものを圧倒します。
展覧会タイトルである『起立』について、作家は以下のように述べています。

僕の制作において、起き立ち上がらせる感覚はとても大事なものです。色々なものが絡み、影響しあい、崩れながらも組み立てていく中で、なんとか何かを起き上がらせて行こうとするわけですが、そこには必ず抵抗というか圧力のようなものがあり、本質的な内容が詰まっていればいるほど、容易くは立ち上がらす事はできません。立ち上がるという事は容易くなく、いかに人にとって大事なものであるかを改めて感じています。