ベンジャミン・バトラー

「Leafless Trees and Sakura」

Installation view from “Leafless Trees and Sakura” at Tomio Koyama Gallery, Tokyo, 2007 ©Benjamin Butler photo by Tsuyoshi Satoh

作品紹介

ベンジャミンは山や木々、いわゆる「風景画」とカテゴライズすることもできる自然をモチーフとして描きます。しかしその方法は、しばしば抽象画を描く事にも酷似しているといえるでしょう。個人的な心象風景でありながらも、同時に幾何学模様のように展開するコンポジションは、鑑賞者に物静かな瞑想的時間を与えます。
近年特に頻繁に描かれている木々の絵画は、一見より抽象的な要素が多いようにも見うけられます。画面全体に、余白を作ることなく反復されるリズミカルな線の増殖には、そのまま抽象表現主義の歴史が全て詰まっているかのようです--モンドリアンの水平と垂直のリズム、カラーフィールド・ペインティングの一派が生み出したオールオーバーへの固執、あるいはフランク・ステラのより単純化された色面と線との関係など、さまざまな要素がどことなく思い出されます。
一方その色合いは時にコミックのようにサイケデリックで、うす塗りの軽快なタッチは、アレックス・カッツなど現在進行形であるニューペインティングの筆致を彷彿とさせます。

展覧会について

抽象と具象のぎりぎりの境界線をなぞる彼の絵画は、こうしたコンポジションにおける様々な要素がありながらも、以前として個人の記憶に働きかけるような感傷的表現としても成立し続けています。そこには抽象化され、解体される以前の、ベンジャミン自身が捉えた記憶としての風景が常に介在しています。
インスタレーションの方法もまたユニークです。本展『Leafless Trees and Sakura』では、会場の1番奥に桜の木を思わせる、ピンク色のマッス(塊)をしならせた木のペインティングがあり、床一面に、小さな台形に切りとられた同じくピンク色のキャンウ゛ァスが、芝居に使われる小道具の花びらのように散りばめられています。周りにはブルーを背景にしたデコラティウ゛な木々の絵が桜に向かうパースペクティウ゛で配置され、迷宮のように鑑賞者を包み込みます。
展示空間は、平面の作品だけでありながらあたかも静まりかえった森の中にいるような、あるいは舞台美術として作られた木立の中に立ったかのような印象を私たちに与えます。
本展では新作のペインティング6点とインスタレーションを展示致します。

作家プロフィール

ベンジャミン・バトラーは1975年カンザス州生まれ。2000年、シカゴ・アート・インスティテュート修了。現在はニューヨークを拠点に制作活動を行っています。
ニューヨーク、ロサンゼルス、トロント、ウィーン、バーゼル、ベルリンなど世界各地で個展を行っており、小山登美夫ギャラリーでは2003年の『Little Mountain』以降、4年ぶり2度目の個展です。2005年ニューヨークのP.S.1で開催された『Greater New York』に出展したほか、数多くのグループ展にも参加しています。

  • Installation view from "Leafless Trees and Sakura" at Tomio Koyama Gallery, Tokyo, Japan, 2007 ©Benjamin Butler photo by Tsuyoshi Satoh
  • Installation view from “Leafless Trees and Sakura” at Tomio Koyama Gallery, Tokyo, 2007 ©Benjamin Butler photo by Tsuyoshi Satoh
  • Installation view from “Leafless Trees and Sakura” at Tomio Koyama Gallery, Tokyo, 2007 ©Benjamin Butler photo by Tsuyoshi Satoh