【作品紹介】
桑原正彦の絵画作品は、現代社会に生きる私たちが普段見過ごしている世界の奇妙さを、軽妙にすくいとってみせます。都市部の淀んだ水辺に生息する奇妙な動物、体の半分がハムになってしまった畸形の豚のような生物、その他名前すらつくことのない無数のキャラクター、或はチラシや雑誌広告に毎日のように掲載される、無名の女性モデルたち—これらは、全てのイメージが消費されていくこの世界において、いわば最も安価な場所にいるからこそ、悲哀を帯びた聖なる美しさを秘めています。
現代の都市生活者が抱える空疎な孤独感が、時にユーモラスなモチーフでやわらかな色彩とともに描かれることによって、ある種の救済としてはたらいているかのようです。
【展覧会について】
本展では、1996年から2001年までの、風景を描いた作品をご紹介いたします。
潮干狩りを連想させるような、浜辺に打ち寄せられた貝が素朴なタッチで描かれる『ピンク色の浜 pink beach』(96年)から、雑草の茂った草むらのような、より抽象的な風景が展開する『その後 After That』(00年)、ぼかされた色面で地平線だけが表現されている『緑地Green Field』に至るまで、どこかしらに空虚さを漂わせた、都市の風景が浮かび上がります。