作品紹介
福永大介は、身近にありながら普段私たちが目にとめることもない取り残された場所、誰からも忘れ去られたような物を描きます。うらぶれた空き地、建築中のビルのまだ電気工事もされていない地下室や、モップなどの使い古された掃除用具、タイヤ、地面にとぐろをまいた水道ホース、廃棄物など。「タイヤやモップが置かれている様が、そこだけ時間のずれている、抜け落ちているような印象を感じ、それがとてもドラマティックに思える」と話す福永のペインティングのなかでは、それらの物たちは、通常付与されている使用価値を脱ぎ捨て、感情や人格すら得たかのようにそれら自身で存在しています。
2011年の小山登美夫ギャラリーでの個展「何かを味方にすること」で福永は、初めて人物を描きました。空虚や無目的のなかでも拠り所となるものを見つけて豊かに存在する人物たち。並べられたホイールに向かってタクトを振る人物を描いた「private orchestra」など、彼らの個人的な充足した瞬間を、大きいサイズのキャンバスにダイナミックにとらえた作品を展示しました。
独特のタッチで描かれたこれらの福永のペインティングは、演劇的な強い喚起力をもっています。虚構と現実が溶解し、そこにたちあがる濃密な感覚。それは「最初に感じたイメージは絶対に形にしなければならない」という福永が真摯に突き詰め、時にはそれを超えることによって仕上げられていくペインティングに、力強く宿っています。
展覧会について
本展で展示する作品について、福永は以下のように述べています。「もしも世界が演劇の舞台だとしたら、主役のヒロインなどではなく、暗幕の袖裏で出番待ちをしているモノたちのどうしようもないざわめきを描きたい。それらの場やモノに出会うことによって喚起されてくる記憶や想像力を。」
本展では新作のペインティング4、5点が展示されます。独自のローカリティを追求しつづける福永の新作を是非ご高覧ください。