【作品紹介】
リチャード・タトルは現代において最も重要なアーティストのひとりです。1960年半ばから現在に至るまで、半世紀にわたるその長いキャリアにおいてタトルは、非常に多様であり、分類すら飛び越えた作品群を発表し続けてきました。彫刻、ペインティング、ドローイング、コラージュ、インスタレーション、そして言語や詩、これらの間にある領域から生み出されるその作品に共通しているのは、何にも規定されず、属さない自律性と独立性です。作品自体のもつライン、フォルム、質感、色、ボリュームが構築するのは、既存の表象・認識システムの外にある、いきいきとして詩的な、オルタナティブな視覚言語であり、その空間的な展開による豊かな知覚的効果です。使われているのはきわめてありふれた、あるいは壊れやすい紙や木片、ワイヤーや金属片などの素材ですが、それが直截でありはかなげであればあるほど、作品はより神秘性や驚きに満ちあふれるようです。
抽象表現主義の著名アーティストたちを輩出し、当時最も重要なギャラリーであったNYのベティ・パーソンズ・ギャラリーでタトルは1965年に初個展を開催。68年には染めた後にカットしたキャンバスを直接壁に展示した―—絵画を解体し、絵画でも彫刻でもあるような、またどちらでもないような―—「クロス・ピース」を、以降も壁に張ったワイヤーとその影、ドローイングの線で構成される「ワイヤー・ピース」や、多様なコラージュ作品など、現代美術の歴史に残る作品を発表し、ポスト・ミニマリスト世代を代表するアーティストとして、次世代に大きな影響を与えてきました。また近年では三次元のフォルムというよりむしろ空間の概念として、スケールの大きい彫刻を探求する「システムズ」シリーズなどを発表。描写ではなく、何かを問い、探求し、即興や発見をともないながら生み出され、その鑑賞の経験や空間自体も作品の一部となるような作品を制作し続けています。
【展覧会について】
リチャード・タトルは2012年9月より、ロサンゼルスのゲッティ・リサーチ・インスティテュートのアーティスト・イン・レジデンスに滞在しています。日本での待望の展覧会である本展では、その滞在中に制作した壁掛けの彫刻、またドローイングなどの新作を展示いたします。小山登美夫ギャラリーでは2002年、2007年以来3度目、京都スペースでは初めての個展となります。この機会に是非ご高覧下さい。