【展示風景 オンラインビューイング】
協力:Matterport by wonderstock_photo
トム・サックス展「茶碗」では、新作の陶芸作品と彫刻を展示します。
サックスは陶芸を学びその制作を日々続けてきました。2012年に陶芸作家のJ. J. ピートのもとで2年間集中的に修練し、陶芸の制作と研究に没頭しました。以来、手びねりによる茶碗は彼の日々の制作活動の一部になっています。これまで磁器やストーンウェアを含む様々な陶磁器の種類や、複数の焼成技法を身につけてきました。
サックスの茶碗のフォルムの原型は長次郎の作品です。長次郎は16世紀に秀吉によって日本へ連れ去られた中国渡来の陶工で、16世紀の日本の陶芸に革命を起こしました。長次郎の伝説は謎に包まれてはいるものの、彼は素朴な瓦職人であり、茶人である千利休の指示により、驚くほどシンプルで装飾のない茶碗を作ったとする説があります。サックスは、長次郎の作品を見るためだけに来日したこともあります。前回の日本滞在の時には十五代樂吉左衛門(現、樂直入)を訪ねています。
サックスの茶碗の多くは、窯の中や使用中に割れてしまうという惨事に見舞われます。本展では、更谷 源氏とのコラボレーションによる伝統的な金継ぎを施した作品とともに、炭素繊維強化エポキシ樹脂で修復した作品もあわせて展示します。
サックスは、茶碗を手びねりで成形する伝統的な技法を踏襲しながらも、ブランクーシに着想を得た合板製の台座、サックスならではのS.M.U.T.*トレイや、ソノチューブと段ボールでできた台座に作品を載せて壁に展示することで、彫刻として表現しています。本展の2つの主要な作品は、ナム・ジュン・パイクの作品と、サックス自身の継続的な映像制作へのオマージュとなっています。1つは1970年代のアメリカで彼が子供時代に使っていたテレビを再利用し、テレビの中に新しい茶碗を入れたもので、テレビのスイッチを入れると彫刻が照らされるようになっています。それに対してもう1点では、茶碗は段ボール箱の中に入れられています。箱の中のビデオカメラが箱の外のスクリーンに映像を映し出し、中にある茶碗を「翻訳」して見せるのです。
このように意味を転覆させるような展示の方法に加えサックスは、ろくろを使わず手で成形するという伝統的な手法を用いながらも、単に古い技法を模倣するだけでなく、彼独自のブリコラージュの手法を陶芸に応用しています。サックスはこう言います「私はiPhoneのように完璧なものは作れないが、Appleは私の茶碗のように完璧な欠陥のあるものは作れない」と。
これらの茶碗の制作はすべて手びねりで行われ、ろくろあるいはサックスが否定的に言うところの「旋盤」を使うことはありません。サックスは、機械化された回転のプロセスは、あらゆる情報を1か0であつかうデジタルの世界にあまりにも似ていて、創造の経験から人間性を疎外してしまう、と考えているのです。
2019年東京オペラシティ アートギャラリーでの個展「ティーセレモニー」、同年小山登美ギャラリーでの「Smutshow」に続く、トム・サックスによる彼独自の茶道の世界をぜひご覧ください。
*Sachs Modularized Utility Tray
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展覧会担当:長瀬夕子
プレスに関するお問い合わせ先:
Tel: 03-6459-4030 (小山登美夫ギャラリー オフィス)
Email: press@tomiokoyamagallery.com
(プレス担当:岡戸麻希子)
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