【展示風景 オンラインビューイング】
協力:Matterport by wonderstock_photo
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今回、12回目の桑原正彦展を開催します。桑原さんがファイルを携え、私が当時働いていた谷中のSCAI the Bathhouseにきたのは1995年。その当時、制作していた懐かしくもあり悪夢のような作品に、私は強い興味を持ちました。SCAIではできないと思い、友人がデイレクターをしている青山のギャラリーに相談し、個展を開催してもらいました。タイトルは「石油化学の夢」。ビニール、プラスティックなどの素材で作られるおもちゃのぬっぺりした絵の横に、女の人の顔やステーキ肉の切り身の絵が並んでました。豚の大きな顔も。その時から、くさい昭和のドブ川を嗅ぎながら育ってきた桑原さんは、商品の生産過程、欲望の商品化、都市開発、環境破壊を見ながら、作品を制作してきたんだと思います。もっといろんなことも人の内部でもおこってきたでしょう。その光景をずっと、絵として残している。それがいい、悪いではなく、人間の持つ本質として描いているんだと思います。今回の展示も、「遺品」「不通」「果て」といった不穏なタイトルが並びますが、静かな光の中の一つの光景です。是非、楽しんでください。
小山登美夫
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桑原は1990年代の後半から一貫して、いま住んでいる環境に対する人間の欲望による変化に着目して作品制作をしてきました。
進化、効率、大量生産、加工、洗浄、商品価値を求めるのに伴う破壊、汚染。60、70年代日本高度成長下の幼少期の思い出とともにある様々な変化を、奇妙な生物、ペットとしての動物、おもちゃ、風景、折込チラシの無名の女の子たちや建売住宅のイメージを通して作品にしています。
公害によって汚染された海に現れたアザラシは、そこを新しい生活の場として生き抜き人々に可愛さをまきちらします。可愛いと思う心も人間の欲。その絶望的でもあり、楽園のようでもある世界が桑原の大きな魅力になってます。
本展のタイトル「heavenly peach」は芳香剤のような、何かが終わった後に残っている微かな香りのイメージだと桑原は言います。出展作の「遺品」も、亡くなった人の持物が持ち主がいなくなった後にもぽつんと残っている、その儚げな様子を表しています。
現代への皮肉や空虚感はありつつも、決してつき放すわけではない。愛情と優しさを込めた眼差しをもって、私たちが見過ごしている世の中の可笑しさを軽妙にすくいとる桑原は、今をどう見ているのでしょうか。次の本展に際してのアーティストステイトメントにも、今回の作品の世界観が現れています。ぜひ桑原の最新作をご覧に、お越しくださいませ。
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今朝、光沢を失った表面が剥がれていた。
改めて、それが化粧板であることを思い出す。
魔法は耐用年数を終えて、わたしは14才になった。
嘘っぽい、というよりは
これが世界なのだと思う。
わたしの背中には、嘗て、きれいな羽根があったはずだった。
山の手発、幸せの魔法。
忙しく、疲れた現代人にときめきとヒーリングを。
夢を叶え、仕事も、愛も、お金も手に入れてしまう。
人脈拡大。
大成功しているわたしが、この世の法則教えます。
疲れる。気候も不快。
睡眠不足注意。愛 受け身 吉
ラブ、結婚への夢消えず。通信よい
肛門近くの直腸には、カプサイシンの受容体が
たくさんあるので、おしりが痛くなることも。
猿山での成功。
名誉とか、金とか、アレとか。
上位置にこびる中間層が自分より下の層をつくり、
その位置を維持する。
注文から最短2時間でお届けします。
若い頃は旅行やさまざまな習い事など、
何でもやりました。
けれど、もうやりたい事がありません。
ただ、仮面をつけ、自分は何のために生きているのでしょうか。
私は努力し国家資格を取得し、夫に頼らずとも
暮らせる経済的自立を果たしています。
夫が会社員であるということだけで保険料その他、
多額の納税もせず、平然と生きている女性が許せません。
”本当の価値”とは何でしょうか。
たくさん作って、たくさん買って、たくさん捨てる。
無理に正しすぎる人たち。
おいしい所だけの正統と異端。
わたしは、何を嫌悪しているのか、
それがわかりません。
リーナをバックに入れて、表に出る。
長生をしたら、わたしもこの世界をゆっくりと味わえる日が
くるだろうか。
それでもわたしは、世の中に溢れかえる性急で感情を
あおる言葉に、いつも負けてしまう。
この、わたしがとても重荷。
平和とか、自由には手間と、それに耐えることの出来る
実がとても大切なのだと本で読んだことがある。
何かを考えているふりをしているわたしは、
いよいよ試されることになった。
家電量販店の広い店内を散歩する。
もしかすると、わたしが知らないだけで、感情調整器とか、
そんなのが既に売られているかも知れないし。
わたしにも何とかなりそうな値段で。
”先端機器と身体の融合によって、人間観の変容、
現実の意味内容を変えることも可能です。”
わたしは欲しい。そうゆうのが。
不都合を考えずに済む装置。
夢みたいな物語が。
フェアリー ハートチャーム。
ピーチ リボン パレッタ。
ムーンドロップ 羽根リング。
家に帰って、買ったものを並べてみる。
売場での輝きはそこになく、
平らな空き地みたいだ。
片付けることにした。
わたしはそこで静かな無意味に
なれるかも知れない。
しつこい汚れ。
いやな、おさるさんみたいな、
厄介なゴミ。
バイバイ、さよなら。
白っぽいケーキみたいな家の前で笑っている子。
あれは私かな。
整理収納。
街はとてもきれいだ。
桑原正彦
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Email: press@tomiokoyamagallery.com (プレス担当:岡戸麻希子)
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