山本桂輔

「豊壌」

untitled 2007 oil on canvas 53 × 41 cm ©︎ Keisuke Yamamoto

<作品紹介>
山本桂輔はペインティングとドローイング、また木彫作品を制作しています。作品では、木や草花、キノコ、小さな妖精 のような人影などが、有機的な曲線に巻き取られながら、ひとつのフォルムとしてつながっていきます。平面作品は不思 議なバランスで矩形に区切られ、それぞれの色面は、それ自体で花や昆虫などに見えたり、或は背景の空に見えたり、大 きな森の中に隠れている小さな動物を探すように、私たちの視線は画面の中を自由に動き回ります。 彫刻作品もまた、それ自体が森の一部であるかのような、イメージの広がりを持っています。初期には、油絵の具でペイ ントされた楠の木にマッチを埋め込んだ、全てが燃えてひとつになることができる素材のシリーズが制作されていました。 身近なモチーフを具体的に取り上げていた初期と比べ、昨今の作品は全ての対象が溶け合ってしまったかのような、より 複雑な構図を持っています。「絵を描くことは、底のない世界をさまようこと。それを見てしまったから、絵画からもう 抜け出ることはできない」という作家の言葉どおり、彼の作品で重要なのは描かれる対象ではなく、目に見えないものま で含めた、不確かな世界の断片であるようです。

<展覧会について>
本展では、高さ2メートル近くの木彫作品のほか、新作ペインティングを5点展示いたします。 展覧会タイトルとなる『豊壌』は、作品を作る上でも、また毎日の生活においても、多くのことを吸収して肥沃な土壌と なるべく、日々努めている作家の言葉です。最近の試みのひとつである巨大な木彫作品は、様々なモチーフが渾然一体と なった、彼自身の精神的な土壌そのものであると言えるかもしれません。