井上有一の「花」展

©︎ Yu-ichi Inoue

日本を代表する書家、井上有一(1916年~1985年)。

芸術、芸術という空念仏は小うるさい。内容がなにもなくただ芸術ぶって、嫌味たっぷりなキザな線をひっぱりまわされては鼻もちならない。小さな芸術を作るよりまず人間を作ることだ。桑鳩の亜流にあくせくしていたのでは、十年経っても浮かばれない。自戒、自戒、奮起せよ。(井上有一、1949年6月9日)

井上は19歳で教師となり、25歳で書家の上田桑鳩に師事して以来生涯書に取り組み、数多くの革新的な書を残しました。特に彼の「一文字書」は大胆な造形性を持ち、書と絵画の両領域で優れた傑作として国内外で高い評価を受けています。井上は当時始まって間もないサンパウロ・ビエンナーレ(第4回、第6回)、ドクメンタ2、カーネギー・インターナショナル 1961などの国際展にも次々に参加。批評家のハーバート・リード氏にジャクソン・ポロック等の巨匠と並べ評されたことで評価は一層高まり、没後1989年には国内7美術館の巡回で回顧展が行われた他、1994~1995年横浜美術館からグッゲンハイム美術館ソーホー、サンフランシスコ近代美術館へ巡回した『戦後日本の前衛美術展』へも出品。近年では長谷川祐子氏がキュレーターをつとめ、今年3~5月に開催されたシャルジャ・ビエンナーレ11にも出品されました。東京・京都の近代美術館ほか、国内外の多くの美術館に作品が収蔵されています。本展覧会では「花」の字の一文字書作品、約10点が展示されます。この貴重な機会に、気迫みなぎる井上作品をぜひご堪能ください。
尚、同時開催の小山登美夫ギャラリー(東京、清澄)ではシャルジャ・ビエンナーレに出展された作品10点、KAMIYA ART(日本橋)では小品約12点を展示いたします。