風能奈々

「草上の想像」

Installation view from “Imagination on the Grass” TKG Editions Kyoto, Japan, 2009 ©Nana Funo

【作品紹介】

風能奈々は、優美で感性的なモチーフを独特のマチエールで豊かに紡ぎあげます。今年のVOCA展に出展された、アクリル絵具、染料のペン、ジェッソ、再びアクリルの順に重ね塗りする「花の瘡蓋(かさぶた)」は、静謐さをたたえながらも、重層的で多様な質感からたちあらわれる浮遊感を感じさせます。
風能が幼少の頃耽溺していたという想像や物語の世界は、タブローの上に再来します。ときに悪夢、ときに個人的な家族との物語が、彼女の卓越した素描によって描かれます。同様にイメージの源泉となっているのが、毎日欠かさずに描いているというドローイング・ノートです。日常生活でわき起こる感情の波や心に残ったフレーズなども残すという、日記の要素ももつこのノート。不穏な感じすら抱かせるほどびっしりと描かれたドローイングはそれ自体圧巻ですが、タブローでの魅惑的な発展を暗示するエネルギーをもっています。

【展覧会について】

本展では、今年3月に開催されたVOCA展(上野の森美術館)に出展した、横3メートル88センチの「花の瘡蓋(かさぶた)」、特別に注文して制作した円形のキャンバスを使った作品など、新作のペインティング約8点を展示いたします。
TKGエディションズ 京都での同時開催展では、側面にも描き込まれた20 x 20cmのペインティングを展示します。花、木、神話などのモチーフ、小さな物語の挿絵、そして行ったことも見たこともない場所を描いた旅行シリーズ。染料、アクリル、油彩など技法も異なる多彩なイメージが、展示スペースを埋めつくします。