桑久保 徹

忘れることができない、素晴らしい一日

untitled transient, 2014 ©Toru Kuwakubo

作品紹介

桑久保 徹は彼が思い描くいわゆる職業画家を演じるパフォーマンスとして、自分の中に架空の画家を見いだし、印象派を思わせるような油絵具を厚く重ねたペインティングを制作するという、演劇的なアプローチで制作活動をスタートしました。以降、絵の具の豊かな物質感や描き手の身体性などを通して、媒体としてのペインティングの可能性を探求し続けています。物語(ナラティブ)もまた、桑久保の制作に重要な要素となっています。桑久保は2002年に、芸術論とともに短編小説が収録された「海の話し 画家の話し」を自ら発行しています。物語は往々にしてイメージの源泉として、おそらくその続きや、またいかにしてペインティングがそれらを表し伝えることできるかということの探求のなか、画面の上で様々な色やフォルムへと姿を変えていきます。

展覧会について

海、そして浜辺は桑久保の作品に最もよく描かれる、重要なモチーフです。伸びていく海岸線、水平線、波の音。これらは永遠を感じさせるとともに、自然を前にした人間のはかなさを感じさせます。今回の展覧会に、桑久保は海辺での美しい夏の一日についての物語を寄せています。
「海は淡いブルーで、水平線に近くなるにつれてターコイズのような色に近づいていきました。彼方に小さな白波が現れては消えて行きました。・・・それはとても明るくて、美しい光景でした。光がネガ・フィルムに焼きつくように、その光景はわたしの奥深くに強く焼きついたようでした。わたしはしばらくして、この光景が永遠に忘れることのできないはかない類のものであると感じました。」(「忘れることができない、素晴らしい一日」より抜粋)
シンガポールで初めての個展となる本展では、桑久保の新作のペインティングを約13点展示いたします。

作家プロフィール

桑久保 徹

桑久保徹は1978年、神奈川県座間市生まれ。2002年多摩美術大学絵画科油画専攻卒業。現在も神奈川県を拠点に活動を行っています。02年、東京都現代美術館主催のトーキョーワンダーウォール公募 2002で「トーキョーワンダーウォール賞」を受賞。04年のGEISAI-5にて、小山登美夫がスカウトしました。彼は自分の中に架空の画家を見いだすという演劇的なアプローチで制作活動をスタートします。印象派の画家たちが行ったように海辺にイーゼルを立てて絵を描いたり、描いた絵を背中にくくりつけて「絵を売り歩く放浪画家」としてパフォーマンスしたりと、彼がイメージするいわゆる職業画家をいわば演じてみることが、最初の制作のきっかけになりました。画家に扮した彼が好んで描くようになったのは、多くが海のモチーフです。オイルを混ぜず、油絵の具だけを分厚く盛り上げて描いていくタッチ。現代においてはもはや古典に なりつつある印象派の技法と、桑久保自身の中にある現在の心象風景が重なり合って作品を作り上げています。

主な個展に、「海の話し画家の話し」(トーキョーワンダーサイト渋谷、東京、2010 年)、「The Woman Living on the Beach」(do ART Gallery ソウル、2007 年 )「SCENERY OF TOMORROW」(bendixen contemporary art(コペンハーゲン、デンマーク、2007年)「Illusion of the Sea Ebbing Away」(Galerie Davide Gallo、ベルリン、2006年)、主なグループ展に「アートがあれば ll ─ 9人のコレクターによる個人コレクションの場合」(東京オペラシティアートギャラリー、東京、2013年)、「東京画 ll」(東京都美術 館、13 年)のほか、「あざみ野コンテンポラリー vol.2 Viewpoints いま『描く』ということ」(横浜市民ギャラリーあざみ野 展示室 1・2、神奈川、2012年)、「Happy New Year(s)」(Bendixen Contemporary Art、Valby、デンマーク、2009年)、「アーティスト・ファイル 2010 現代の作家たち」(国立新美術館、東京、2009年)「ポートレート・セッション」(広島市現代美術館、広島、ナディフ、東京、2007年)があり、小山登美夫ギャラリーでは2005年、2008年、2012年と3度の個展を開催しています。
受賞歴として「VOCA展 2013 現代美術の展望ー新しい平面の作家たち」(上野の森美術館)にて奨励賞、2013 年には第3回Dアートビエンナーレ最優秀賞、2011年第三回絹谷幸二賞(毎日新聞社主催)があります。

1978年 神奈川県座間市生まれ
2002年 多摩美術大学絵画科油画専攻卒業

  • untitled transient, 2014 
oil on canvas
, 181.8 x 130.0 cm
, © Toru Kuwakubo
  • ufo, 2014
 oil on canvas
, 150.2 x 220.0 cm
, © Toru Kuwakubo
  • euphoria, 2014 Oil on canvas, 61.0 x 42.0 cm, ©Toru Kuwakubo
  • morning, 2014 Oil on canvas, 100.5 x 140.3 cm, ©Toru Kuwakubo
  • windsurfing, 2014 Oil on canvas, 130.0 x 162.7 cm, ©Toru Kuwakubo
  • A man with a sea bream I, 2013 Oil on canvas, 101.7 x 84.2 x 12.5 cm (framed), ©Toru Kuwakubo
  • A man with a sea bream II, 2013 Oil on canvas, glasses, 85.0 x 75.3 x 9.2 cm (framed), ©Toru Kuwakubo
  • III, 2013 Oil on canvas, 162.0 x 131.2 cm, ©Toru Kuwakubo
  • Sea bathing I, 2013 Oil on canvas, 181.8 x 218.2 cm, ©Toru Kuwakubo
  • Sea bathing II、2013 Oil on canvas, 181.8 x 218.2 cm, ©Toru Kuwakubo
  • Sea bathing Ⅲ, 2013 Oil on canvas, 181.8 x 218.2 cm, ©Toru Kuwakubo
  • Sea bathing IV, 2013 Oil on canvas, 181.8 x 218.2 cm, ©Toru Kuwakubo
  • installation view from [One Wonderful Day Which Cannot Be Forgotten] at Tomio Koyama Gallery Singapore, 2014 ©Toru Kuwakubo
  • installation view from [One Wonderful Day Which Cannot Be Forgotten] at Tomio Koyama Gallery Singapore, 2014 ©Toru Kuwakubo
  • installation view from [One Wonderful Day Which Cannot Be Forgotten] at Tomio Koyama Gallery Singapore, 2014 ©Toru Kuwakubo
  • installation view from [One Wonderful Day Which Cannot Be Forgotten] at Tomio Koyama Gallery Singapore, 2014 ©Toru Kuwakubo
  • installation view from [One Wonderful Day Which Cannot Be Forgotten] at Tomio Koyama Gallery Singapore, 2014 ©Toru Kuwakubo
  • installation view from [One Wonderful Day Which Cannot Be Forgotten] at Tomio Koyama Gallery Singapore, 2014 ©Toru Kuwakubo
  • installation view from [One Wonderful Day Which Cannot Be Forgotten] at Tomio Koyama Gallery Singapore, 2014 ©Toru Kuwakubo