工藤麻紀子

工藤麻紀子展

うみのもの, 2011 oil on canvas, 130.0 x 162.0 cm, ©Makiko Kudo

» 作品紹介

工藤麻紀子の絵画に描かれるのは、「毎日通っているのに急に光って見える」風景だと作家は言います。現実では別々に認識している様々な場面が夢の中でダイナミックに結びつき、やがて目覚めたときに、細かなことは思い出せなくてもそのときの自分の感情だけが強く胸に残っている、工藤の絵画を前にするとそのような感覚を覚えます。プリミティヴな筆致とはうらはらに計算された正確な構図は、鮮やかな色彩とあいまって、カオティックな躍動感を生み出しています。女の子や小さな動物たちは風景の中に取り込まれ、繁茂する植物や箱庭のような建物と渾然一体となって、断片的な感情と結びついていきます。
キュレーターであり批評家のデヴィッド・ペーゲルは、ロサンゼルス・タイムズのレビュー記事で、モネの睡蓮やルソーの夢幻的リアリズム、マティスのフォーヴィズムなどに言及しながら、「彼女の胸を打つ作品は、アニメ世代の鞭打ち症的な絵画表現にとって、親密でありながら内省をもたらすものだろう。自分の本当のふるさとだとはどうしても思えないような場所から逃れることができない、というパラドックスが、工藤の卓越した主題である」と評しました。

» 展覧会について

『うみのもの』では、茫洋とした草原の真ん中に青い髪の少女が座り込んでいます。腕いっぱいに抱えられた1匹のマグロは、はるか遠い漁港からここへ流れ着いたのでしょうか。『いぬとねこ』は、作家が冬の夜に散歩をしていて、二人の少年が住宅街で木の枝をひろって焚き木していたのを見た風景から連想されて描かれました。夜の闇に覆われていく草むらの中で、帽子を目深にかぶった部屋着の少年と動物の姿をした少年が、小さな焚き火の炎を見つめています。
彼らは決して言葉を語ることはありませんが、生い茂る植物たちが自ら光を帯びて煌煌と輝くこの場所には、数えきれない命のさざめきがあふれ出ているかのようです。
3月11日に起きた東日本大震災は、未曾有の悲惨な災害として今も多くの悲劇を生み、助けを必要とする多くの人たち、動物たちがいます。「自分にできることは何か」という問いを誰しもが突きつけられる中、作家もまた作品を通して、この危機と向き合い続けています

作家プロフィール

工藤麻紀子

1978年青森県生まれ。2002年女子美術大学油画科卒業。同年、小山登美夫キュレーションによるグループ展「フラジャイル・フィギュアズ」(パレット・クラブ、東京)、および村上隆キュレーションのグループ展「東京ガールズブラボー2」(ナディッフ、東京)に出展、2004年から国内外の多数の展覧会に参加、現 在は神奈川を拠点に活動を行っています。工藤麻紀子の絵画には、彼女が日常生活で出会ったものと、夢で 見た世界のようなイマジネーションが渾然一体となった不思議な心象風景が広がります。ダイナミック且つ繊細な筆致、バランスの取れた鮮やかな色彩、そして複数の場面とパースが同時に展開する大胆な構図によって、カオティックな躍動感に満ち溢れているのです。

近年の主な個展に、2016 年小山登美夫ギャラリー、2015年ロンドンの Wilkinson Gallery(2012年にも開催)、2013年8/ ART GALLERY/ Tomio Koyama Gallery、2011年ロサンゼルスのMarc Foxx Gallery などがあります。また近年の主なグループ展として、2014 年東京オペラシティアートギャラリーでの「絵画の在りか」、同年モスクワの Garage Museum of Contemporary Art で開催された「The New International 2014」、2013年青森での「十和田市現代美術館 開館5周年記念展 vol.1 flowers」、ロンド ンのサーチギャラリーでの「Body Language」、2011年ソウル、Gana Art Center での「Pathos and Small Narratives」など、国内外で数多くの展覧会に参加しています。 パブリックコレクションでは、2007年テキサスのフォートワース近代美術館での「Pretty Baby」、2004年カ リ フ ォ ル ニ ア のUniversity of California, Berkeley Art Museum & Pacific Film Archive での「MATRIX 213: Some Forgotten Place」へ出展した作品が同美術館にそれぞれコレクションされたほか、ロサンゼルス現代美術館、ドイツのオルブリヒト・コレクション、ロンドンのサーチ・コレクション、フラワー マンコレクション、国内では国際交流基金、高橋コレクションに作品が収蔵されています。また、山崎ナオコーラの小説『反人生』(2015年、集英社)の装画にもなりました。
作品集として『まわってる Turning』(小山登美夫ギャラリー、2012年)があります。

1978年 青森県生まれ
2002年 女子美術大学油絵科卒業

  • installation view at Tomio Koyama Gallery, 2011 ©Makiko Kudo
  • installation view at Tomio Koyama Gallery, 2011 ©Makiko Kudo
  • installation view at Tomio Koyama Gallery, 2011 ©Makiko Kudo
  • installation view at Tomio Koyama Gallery, 2011 ©Makiko Kudo
  • 灰色のまち / Gray town, 2011 oil on canvas, 227.5 x 365.0cm, ©Makiko Kudo
  • 見えないもの /invisible, 2011 oil on canvas, 182.0 x 227.5cm, ©Makiko Kudo
  • じゅうたん / Carpet, 2011 oil on canvas, 65.5 x 80.5cm, ©Makiko Kudo
  • いるか/ Dolphin, 2011 oil on canvas, 91.0 x 91.0, ©Makiko Kudo
  • 夕飯のおかず/ Dish for dinner, 2011 oil on canvas, 65.5 x 80.5cm, ©Makiko Kudo
  • めぶく/ Bud, 2011 oil on canvas, 32.0 x 41.0cm, ©Makiko Kudo
  • 夕方がいちばんすき / I like the evening most, 2011 oil on canvas, 53.0 x 65.5cm, ©Makiko Kudo
  • あきち, 2011 oil on canvas, 91.0 x 116.5 cm, ©Makiko Kudo
  • いぬとねこ, 2011 oil on canvas, 130.0 x 162.0 cm, ©Makiko Kudo
  • 春がくるのは止められない, 2011 oil on canvas, 194.0 x 259.0 cm, ©Makiko Kudo
  • さんかく / Triangle, 2011 oil on canvas, 33.5 x 24.0cm, ©Makiko Kudo