地下の湿度と紙の手ざわり

地下の湿度と紙の手ざわり The Humidity of Underground and the Feel of Paper 2014 charcoal on paper 51.0 × 65.5 cm ©Nana Funo

風能奈々のペインティングでは、作品の大小を問わず、優美な動植物、人物、文字が象徴的に表現され、画面全体を覆います。アクリル絵の具や染料、マスキングなどの様々な技法を用いて、幾重にも重ねられたレイヤーは、「浮いているのでもない、重なっているのでもない、奥行きという表現では捉えきれない空間的な複雑さ」(長屋光枝「現代美術の展望 VOCA展 2009」カタログ)をもっています。彼女は絵画制作に併行して毎日3~5時間、ペンでノートにドローイングを行ないます。絶えず手を動かし続けることがもたらした、技術と独特のテクスチュアは、作品を自立的に構成する造形言語として機能し始め、画家は作品と一定の距離を保ちながら、そこに立ち現れる世界の有り様を注視しているようです。

制作しているときは水中に潜っているような自分の中の地下におりていくような感覚というものがあります、その時に頼りにするものは今まで描いてきたたくさんの手が覚えているドローイングだったり、何度も繰り返し描いてきてすごく親密な関係になってきたモチーフだったりします。息をできるだけ長くとめて決して溺れず。 長時間描き続けること。どれだけ階段が長く地下へと続いていて、日の光が届かなくなっても恐れずに進んでいくことです。(風能奈々)

本展では、ペインティング数点に加え、展覧会としては初めて木炭によるドローイング約50点を展示いたします。風能奈々は普段、下描きや描き直しを行ないませんが、木炭で描く時は、描いては消す作業を繰り返し、モチーフは完成まで揺らぐように動くと言います。風能奈々の物語に満ちた幻想の世界をお楽しみください。
風能奈々は1983年、静岡県生まれ。2008年京都市立芸術大学大学院絵画専攻油画科修了。現在京都に制作の拠点をおいています。
小山登美夫ギャラリーではこれまでに2014年「The Fish Glitters as Its Scales Tremble」(シンガポール)、2012年「水の漏れないうつわ」(東京、清澄)、2009年「誰がその物語を知る」(京都)の3回の個展を行っており、主なグループ展に2014年「絵画の在りか」(東京オペラシティアートギャラリー)、2009年「VOCA展」(上野の森美術館、東京)があります。作品は、ジャピゴッツィコレクション、高橋コレクション、高松市美術館、モンブラン GBU ジャパンなどに所蔵されています。