落合多武

ひっ掻き 血 または猫彫刻

installation view from scratching, blood or cat carving at Tomio Koyama Gallery, 2007 ©Tam Ochiai

【作品紹介】

落合多武は、ドローイング、ペインティング、彫刻、ビデオ、観客と相互的に行うパフォーマンスなど、様々な表現方法を持っています。ニューヨークと水戸芸術館で発表された『ショッピング・バッグ』シリーズ(お店の紙袋をキャンヴァスに見立て、小さく抽象表現主義的なペイントを署名のように施してあるもの)から現在に至るまで、落合の作品からは、日常生活の中でふと感じる些細な世界のずれ、軽さと重さ、ユーモラスなものとシリアスなものの不思議な結びつきを感じることができます。
彼の思考の断片として描き留められていくドローイングは、作品のテーマを内包する小さな萌芽の「部分」であると共に、1つの展覧会そのものを形作る「全体」にもなり得ます。外国語のつづりまちがい、成立しているのかどうかわからない数式、女の子の髪の毛とストライプシャツの奇妙な呼応、映画や小説からの断片的な引用、繰り返しなど、私たちは部分を与えられることによって、自然と全体の輪郭を想像し始めるのです。

【展覧会について】

本展は猫彫刻(cat carving)と猫曲線(cat curving) という、2つのアイデアをもとに構成されます。猫彫刻は、猫が実際にcarving(ひっ掻く、または彫刻する)したり、そこで滑ったり、昼寝したりして完成する、パフォーマンスの要素が含まれた立体作品です。
また猫の形の立体も計画されており、これらは落合自身が猫の彫刻を作りながら、猫も作家の彫刻を作るという対のような構成になる予定です。猫曲線は、猫のしなやかな体の線、或はアールヌーボのデザインなどに見られる猫足的曲線を用いた作品です。

作家プロフィール

落合多武

落合多武は1967年神奈川県生まれ。1990年和光大学卒業後に渡米し、1993年ニュ−ヨーク大学芸術学部大学院修了。現在ニューヨークを拠点に活動を行っています。

主な展覧会として、「クリテリオム16 落合多武 “ショッピングバッグ” 」(水戸芸術館、茨城、1995年)、「MOT Annual フィクション?―絵画が開く世界」(東京都現代美術館、東京、2002年)、「Flashback」(Kunstverein Freiburg、フライブルグ、ドイツ、2005年)、「夏への扉―マイクロポップの時代」(水戸芸術館、茨城、2006年)、「ウィンター・ガーデン:日本現代美術におけるマイクロポップ的想像力の展開」(原美術館、2009年[ケルン日本文化会館、2009年他多数巡回])、「スパイと失敗とその登場について」(ワタリウム美術館、東京、2010年)、「横浜トリエンナーレ2011:Our Magic Hour」(横浜美術館、その他周辺地域、神奈川)などがあります。2016年には『リ、ワイルド』」(アラタニウラノ、東京)にて、映像作家の大木裕之との日本とニューヨーク間でのやりとりによる共作のドローイングや映像、その場で作り上げられた立体、など新しい試みをしました。その時に発表した「灰皿彫刻」は2017年ニューヨークのTeam Galleryでの個展「Tarragon, Like a Cat’s Belly」でも展示され大きな話題になりました。また近年では、日光でのアン・イーストマンのトレッドソン別邸プロジェクトに関わり、国内外の様々なアーティストと共にアートの実験に取り組んでいます。

落合作品は、国立国際美術館、国際交流基金、東京都現代美術館、ドイツ銀行、高橋コレクションに収蔵されています。