桑原正彦

「あかるい日」

1959年東京に生まれ、80年代頃から作品を発表し始めた桑原正彦。高度経済成長期に育った桑原の絵画には、その歪みや暗部が内包されているかのようでした。体の半分がハムになった豚や、輸入のきらびやかなおもちゃの粗悪なコピーのようなイメージ、工場排水に汚染された水辺の奇妙な生物などが、のっぺりとした筆致で繰り返し描かれ、それはまるで、日本の戦後文化の後ろめたさ、恥ずかしさを白日に晒すようで、ある種の社会的問題提起の力を備えていました。

しかし90年代後半から、彼の絵画はそうした社会的言説性から徐々に遠ざかり、眼差しはよりプライベートな、内面の方に注がれるようになったようです。花やクラゲ、人形のようなモチーフが遠近なく乳白色の中に浮かび、そこには独特の体温、気だるい温もりが漂います。そして、雑誌や広告上で日々消費される無名の女の子たちのイメージが、頻繁にあらわれる頃から、それまでの桑原の絵画に支配的だった粘着的な重さは、軽妙さにとって代わられ始めます。近作の明るい画面には、そこはかとない寂寥感と表裏一体の不思議な多幸感が満ち、女の子のイメージは、どことなく聖母とも重なります。本展覧会では、2012年の個展以降に制作された新作を展示します。

作家プロフィール

桑原正彦

桑原正彦は1959年東京都生まれ。小山登美夫ギャラリーでの個展は、1997年「棄てられた子供」、1999年「眺め」、2001年「暮らしと膿」、2005年「土地開発」、2007年「夏の終わりに」、2008年「窓」、2010年「とても甘い菓子」、2012年「夢の中だけで」、2015年「あかるい日」、そして今年2017年「fantasy land」で10度開催しており、アメリカ、サンタモニカのRichard Heller Galleryでも、2001年、2008年と2度の個展を開催しています。

主なグループ展に、「TOKYO POP」(平塚市美術館、神奈川、1996年)、「The Japanese Experience – Inevitable」(Ursula Blickle Stiftung財団、クライヒタール、ドイツ、2002年、以降ザルツブルグ近代美術館、オーストリア、2004年へ巡回)、「POPjack: Warhol to Murakami」(デンバー現代美術館、アメリカ、2002年)、「Japan Pop」(ヘルシンキ市立美術館、フィンランド、2005年)、「ポートレート・セッション」(広島市現代美術館、広島 / ナディッフ、東京、2007年)、「Pathos and Small Narratives」(Gana Art Center、ソウル、韓国、2011年)などがあります。