大野智史

「acid garden」

作品紹介

本展<acid garden>では、ペインティングの他、木や土を使ったインスタレーションが展示されます。オレンジ色のホースを巻き付けられた木の幹は、人間の拘束を受け止め、調和しようとする自然の切り取られた姿に思えます。細かく砕かれた土は、砂絵のように床に模様を描き、空間全体が彼の思念の中で、触覚的に一つにまとめあげられていきます。
初の本格的な個展です。

展覧会について

2003年、イラク戦争開戦の日に米軍横田基地を見に行ったときの感覚が、大野にとって最初のシリーズ作品『Yokota US Air Base』のきっかけとなりました。「そのとき戦争が起きたという出来事を、自分が生活している場から一番近いところで何か接することができるだろうか」と考え基地に赴いた彼が目にしたのは、壁に囲まれた基地の中に植えられた杉の木でした。外界から遮断され、人工的に閉ざされた空間の中でなお、自然として存在する木の姿は、普段目にする木々とは異なるインスピレーションを彼に与えました。

以降彼の作品には、閉鎖された空気感、人工と自然との対峙と融合、自然界とどこかでつながっている自分が新たに捉え直す空間の感覚などのテーマが垣間見られます。紙を貼りあわせた巨大なペインティングには、彼が感じる森、或いは部屋の中に入り込んだ木々が、時に表現主義的にも見える直截な筆致で、大胆に描かれます。2004年に参加した鹿児島県、甑島アートプロジェクトでは亜熱帯の島で実際に生活し、その記憶と東京の部屋の中での生活が溶け合った、『sleep in jungle』というシリーズが生まれました。大きなスピーカーのある自分の部屋に、記憶の中のジャングルが侵食し、部屋の中でなお自然を感じる、記憶と身体の接点が描かれています。2005年Sapporo Artist in Residenceの助成により参加したPRAHA projectでは、札幌に二ヶ月滞在し制作を行いました。ここでも自分をとりまく深い自然への、呪術的なまでの回帰の感覚が色濃く作品に反映されています。

作家プロフィール

大野智史

大野智史は1980年岐阜県生まれ。2004年東京造形大学卒業。現在山梨県富士吉田市を拠点に、制作活動を行っています。

大野は現在富士山麓にアトリエを構え、原生林の中で自らの感覚を研ぎすましながら、自然と人工の対峙と融合、時間を探求する絵画制作を行っています。大野の制作の背景には、東西の美術史と、絵画的な表現についての分析があります。デジタル時代を象徴するようなフラットな色面構成と描写的な表現を1つの画面で拮抗させ、感覚を多層化させながら、絵画の可能性を探求します。「Prism」シリーズは、ヤモリに食べられてしまう運命ながら、街灯の光に引き寄せられるように集まっていく蛾を目撃した経験から着手したものです。それは生きとし生けるものの極限状態の体現、そして光についての科学的研究を踏まえた究極の美の表現と言えます。

主な個展として、2007年にはホノルル現代美術館で個展「Prism Violet」を行い、小山登美夫ギャラリーにて5度開催しています。
主なグループ展に、「STANCE or DISTANCE? わたしと世界をつなぐ『距離』」(熊本市現代美術館、2015年)、「『アート・スコープ 2012-2014』─旅の後もしくは痕」(原美術館、東京、2014年)、「絵画の在りか」(東京オペラシティアートギャラリー、2014年)、「リアル・ジャパネスク」(国立国際美術館、大阪、2012年)、「VOCA展、2010年」(上野の森美術館、東京、2010年)、「越後妻有アートトリエンナーレ、2009年」(福武ハウス、2009年/旧名ヶ山小学校、新潟)、「THE ECHO 展」(ZAIM 別館、横浜、2008年)などがあります。作品はビクトリア国立美術館、原美術館、トヨタアートコレクション、国立国際美術館ほか、国内外の個人コレクターにも収蔵されています。

  • Installation view from "acid garden" at Tomio Koyama Gallery, Tokyo, Japan, 2006 ©︎Satoshi Ohno
  • Installation view from "acid garden" at Tomio Koyama Gallery, Tokyo, Japan, 2006 ©︎Satoshi Ohno
  • Installation view from "acid garden" at Tomio Koyama Gallery, Tokyo, Japan, 2006 ©︎Satoshi Ohno